VMwareがZimbraの買収発表。クラウドのインフラ、ミドルウェア、アプリケーションの3つを手中に
VMwareが、電子メールやコラボレーションツールをオープンソースのWebアプリケーションとして提供しているZimbraを、Yahoo!から買収することで合意したと発表しました。
Yahoo!は2007年にZimbraを買収後、同社のWebアプリケーションの技術をYahoo!が提供する電子メールサービスなどに応用してきました。Yahoo!はVMwareがZimbraを買収後も、引き続きZimbraの技術を同社の電子メールやコラボレーションツールなどに利用することになっています。
インフラ、ミドルウェア、アプリの3レイヤを手中に
VMwareは昨年8月に、Javaのフレームワークとして知られる「Spring Framework」の開発元であるSpringSourceを買収しています(参考:VMwareによるSpringSourceの買収で、Javaがクラウド対応へ進化する)。
Spring Frameworkは開発者向けのミドルウェアであり、今回のZimbraはエンドユーザー向けのアプリケーションです。これで仮想化ソフトウェアのVMWare、vSphereと合わせて、同社はクラウドを構成するインフラストラクチャ-、ミドルウェア、アプリケーションという3つの重要なレイヤのソフトウェアを手にしたことになります。
オンプレミス、クラウドの両方でZimbraの展開は重要
VMwareのチーフテクノロジーオフィサー(CTO)であるSteve Herrod氏は、同社のブログ「The Console」にポストしたエントリ「VMware to acquire Zimbra」で、Zimbraを買収した理由について次のように説明しています。
There are two primary reasons for the acquisition:
- Zimbra will further our mission of simplifying IT
- Zimbra will add to the portfolio of offerings we provide our VMware vCloud™ partners
買収には主に2つの理由がある。
- Zimbraは、われわれの使命である「ITのシンプル化」をさらに推し進めてくれる
- Zimbraは、われわれVMwareが提供するVMware vCloudのポートフォリオに追加される(べきもの)
ITのシンプル化で同社が重要な役割を果たすものの1つに「バーチャルアプライアンス」があります。これはOSとアプリケーションがインストール済みの仮想マシンファイルと考えられます。これを仮想マシンの上で展開すれば、面倒なインストール不要ですぐにアプリケーションが実行可能です。VMwareはすでに、さまざまなアプリケーションに対応したバーチャルアプライアンスのマーケットを展開しています。
VMwareは、このバーチャルアプライアンスのマーケットを「ビジネスアプリケーションのためのAppStoreみたいなもの」と表現しています。
You can think of the virtual appliance marketplace as our version of iTunes, but for business applications.
そして、Zimbraのバーチャルアプライアンスはそのマーケットで最も人気のあるものの1つだと、CTOのSteve Herrod氏は指摘。
オンプレミスのサーバアプリケーション市場では、バーチャルアプライアンスはキラーアプリケーションのカギとなる可能性があり、また同社はそうなることを渇望しています。Zimbraの買収は、そのための大きな足がかりと考えらます(参考:仮想化の新標準「OVF」登場、OSなんてどうでもよくなる、かも)。
と同時に、ZimbraはYahoo!が買収していたことで分かるように、クラウドアプリケーションとして非常に人気のある製品です。仮想化ソフトウェアのベンダからクラウドのソフトウェアベンダへと挑戦し続けている同社にとって、この製品を入手することには大きな意味があります。
CTOのSteve Herrod氏は、クラウドアプリケーションとしてすでに提供されているZimbraの改良を続けていくとしています。
Zimbra has already proven to be a popular and effective solution for many companies and individuals, and we plan to invest further in advancing its capabilities for this use case.
Zimbraはすでに多くの企業や個人にとって有効かつ人気のあるソリューションであることは明らかで、われわれは今後もそれを改良するために投資していくことを計画している。
VMwareのプレスリリースでは、ZimbraをvSphereベースのクラウドインフラストラクチャーに最適化していくことを明らかにしています。
VMware plans to support existing Zimbra products and open source efforts while further optimizing Zimbra products for vSphere-based cloud infrastructure, alongside Microsoft, IBM and other messaging and collaboration solutions.
VMwareはZimbraの製品およびオープンソースをサポートしていくと同時に、Zimbra製品を、マイクロソフトやIBMのコラボレーションソフトと同様に、vSphereベースのクラウドインフラストラクチャに最適化していく計画がある。
つまり、Zimbraの買収はオンプレミスでのソフトウェア展開にとっても、クラウドアプリケーションの展開にとっても重要だということになります。Zimbraの買収はVMwareにとって非常にふさわしいものといえるでしょう。
今後もさらに買収が続くか?
しかし同社の戦略にとって、強力なアプリケーションが1つあれば十分、ということにはならないでしょう。VMwareそしてvSphereをより魅力的なプラットフォームにするために同社はさらに次のアプリケーションを求めて買収先を探しているかもしれません。