Publickeyの年間記事ランキングを見ながら、2023年のIT業界の出来事を振り返る
今年は生成AIが本格的にブレイクした年としてIT業界の歴史に刻まれる年になることは間違いないでしょう。そうした2023年を、Publickeyの年間人気記事ランキングとともに振り返ってみたいと思います。
2023年におけるChatGPTの登場とそれを契機とした生成AIへの急速な注目度の高まりは、圧倒的なものでした。
いまではIT業界の景色をすっかり変えてしまったクラウドが登場したときでさえ、その変化はもっとゆっくりとしたものであり、しかもクラウドの登場時には懐疑的な意見も多くありました。
しかし生成AIは、ChatGPTが公開されてからわずか2カ月で1億人のユーザーが使い始め、誰もがその高い能力に驚き、あっという間に「ChatGPTを始めとする生成AIはIT業界だけでなく世界中のビジネスを変えうる画期的な技術である」というコンセンサスが世の中に形成されたように思います。
Publickeyの年間記事ランキングでも、1位と2位をはじめとして10位までのなかで生成AI関連の記事が何本も入っていて、多くの読者が生成AIについて、さらに言えば生成AIがプログラミングの世界でどう活用されていくのか、といった発表について注目していることが分かります。
1位から3位:自然言語でアプリケーション開発が可能に
1位 [速報]マイクロソフト、自然言語で誰でもアプリケーション開発が可能になる「Copilot in Power Automate」「Copilot in Power Apps」発表
2位 [速報]「GitHub Copilot X」発表、GPT-4ベースで大幅強化。AIにバグの調査依頼と修正案を指示、ドキュメントを学習し回答も
3位 IT系コミュニティをタダ飯狙いの不審者からどう守るべきか。あるイベントで発生した深刻な事案と提言
3位の記事は先日公開したばかりの記事ですが、IT系だけでなくコミュニティに関わる多くの人に「こんなことになっているとは知らなかった」と言われた記事でした。
4位から6位:さよならVMware
仮想化ハイパーバイザで大成功したことで一気に大手IT企業へと成長したVMwareが、まさか2023年にはBroadcomに買収されてしまう、ということを数年前に予想していた人は少なかったでしょう。
仮想化やコンテナはクラウドの技術的基盤として現在においてもIT業界に多大なる影響を与えています。しかし、その分野を切り開いてきたVMwareもDockerも、その技術の成功ほどには企業として成功できなかった、というのは技術的な成功とビジネスの成功は別であるというIT業界の難しさを象徴しているように思います。
4位 [速報]マイクロソフト、ChatGPTベースの「Microsoft 365 Copilot」を発表。AIがExcelの数字を分析しグラフ化、PowerPointを自動生成、長いメールを要約など
5位 さよならVMware。本日(10月30日)Broadcomによる買収完了で、企業としての存在に幕。VMwareブランドは引き続き残る
7位から10位
2023年はオープンソースの分野でも大きな変化がありました。エンタープライズLinux市場における事実上の標準となっていたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)は、2023年6月にRed Hatがソースコードの公開を事実上終了させることを発表し、Red HatはRHELクローンの存在を明確に否定するメッセージを発したのです。
また、オープンソースを用いたソフトウェアで成功していると思われてきたHashiCorpも今年、全製品のライセンスを商用利用に制限があるBSLライセンスに変更すると発表しています。
これらは今後、オープンソースとソフトウェアビジネスの関係がさらに変化していくのではないか、ということを予感させる出来事でした。
7位 AWS、IPv4アドレスの使用に課金、1時間当たり0.005ドル。2024年2月1日から
8位 マイクロソフト、AzureやMicrosoft 365などに影響した先週の大規模障害の原因報告。WAN内の全ルータが再計算状態に突入し、パケット転送が不可に
9位 Red HatがクローンOSベンダを非難、「付加価値もなくコードをリビルドするだけなら、それはオープンソースに対する脅威だ」と
10位 AWS版GitHub Copilotとなる「Amazon CodeWhisperer」が正式版に。個人ユーザーは無料、VSCodeに対応
2023年もご愛読ありがとうございました!
というわけで、2023年もPublickeyをご愛読いただきありがとうございました。
Publickeyの運営として2023年の大きな変化は2つ。1つはWebサイトとしてのメトリクスをGoogle AnalyticsからSimple Analyticsに変更したこと。もう1つは関連記事の生成を自前のプログラムに変更したことです。
どちらも読者の方にはあまり関係ないのですが、特に関連記事の自動生成はずっと自力で実現させたかったので、ようやく実現できて嬉しく思っています。
さて、最近気づいたのですが、あと2カ月ほどでPubickeyは15周年を迎えます。個人でこつこつと続けてきたブログメディアの運営がいつのまにか15年も続けることになっていたとは、自分でも少し驚いています。とはいえ、2024年も変わらず更新を続けていきますので、引き続きご愛読のほど、どうぞよろしくお願いします。
では、よい年末年始をお過ごしください。
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