単一のメモリ空間として160テラバイトものメモリを搭載、メモリドリブンな「The Machine」のプロトタイプをHPEが発表。理論上4096ヨッタバイトまで拡張可能と
現代のコンピュータにおいて中心的な存在は「プロセッサ」であり、主記憶装置としてのメモリや二次記憶装置としてのストレージなどはすべてプロセッサの制御下に置かれます。
これを「プロセッサセントリック」のコンピューティングとすると、HPEが開発中の新しい大型コンピュータ「The Machine」は、メモリ中心の「メモリドリブン」なコンピュータだと説明されています。メモリをコンピュータの中心に置き、その周囲にはメモリからデータを受け取って処理するための、多数のプロセッサが接続される構造になっているのです。
すべての接続はフォトニクス技術による高速なファブリックネットワークで網の目のようにつながっています。
ストレージはありません。メモリドリブンなコンピューティングでは、中心に位置する膨大なメモリが電源を切ってもデータを失わない不揮発性メモリで構成されているため、これが従来のメインメモリとストレージの両方の役割を備えているのです(そのため、DRAMのように高速な不揮発性メモリを実現できるかどうかがThe Machineの実現の大きなカギになっており、そのための半導体技術が現在開発中とされています)。
Intel persistent memoryの記事でも解説しましたが、将来のコンピュータアーキテクチャの多くでは、不揮発性メモリの発展によってストレージが不揮発性メモリの中に包含されていことが想定されています。
HPEの説明によると、メモリドリブンなコンピューティングでは膨大なデータをコンピュータの中心に保持しつつ、その周囲に多数の多様なプロセッサ(上の図ではSoC:System on Chip)を接続して処理を同時並列的に実行できるため、従来よりも圧倒的に高速かつ効率的な処理、特にビッグデータのような膨大なデータの処理が可能になります。
160テラバイトメモリを搭載、実質的に無限のメモリを搭載
HPEはこのThe Machineのプロトタイプとして、単一のメモリ空間として世界最大、160テラバイトのメモリを搭載したコンピュータを開発したと発表しました。
このプロトタイプはフォトニクスモジュールを用いた高速な光通信で接続された40のノードで構成され、各ノードはCavium社が開発したARMv8-AベースのSoCを用いた「ThunderX2」上でThe Machine用に最適化されたLinuxベースのOSが走っています。
HPEはこのプロトタイプのアーキテクチャで、事実上無制限のメモリ、理論上で4096ヨッタバイト(Yottabytes)を搭載可能だと説明しています(新野注:単位を順に並べると、ギガ、テラ、ペタ、エクサ、ゼタ、その次がヨタ=1024となります)。
HPEはこのThe Machineを次世代のメインフレームとして位置づけ、宇宙科学やパーソナライズされたヘルスケア、運輸におけるリアルタイム予測など、膨大なデータ処理の実現によってこれまで不可能だったことが可能になるとしています。
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