うちのデータセンターのここを見てくれ! 「DCな人の夕べ」第1回開催
電源や空調やケーブルといった話題をデータセンターの関係者が存分に語り合うイベント「第1回 DCな人の夕べ」が昨日5月29日、都内で開催されました。
これまで勉強会やコミュニティといえば、アプリケーションやソフトウェアのインフラなどソフトウェア技術者が中心でした。「DCな人の夕べ」は、データセンター関係者の人たちが交流するコミュニティとして初めての試みだそうです。
イベントのハイライトをまとめました。
石狩DCで冬を越して
さくらインターネット 運用部 石狩センター長 宮下頼央氏。「石狩DCで冬を越して」
2005年にさくらインターネットに入社し、都内のデータセンターをすべて経験して、昨年、北海道の石狩データセンターに来ました。
私、寒さが苦手なんです。今日もセーターを着てます。
今年の冬、石狩では数メートルの積雪がありましたが、あらかじめモックアップで積雪試験などをしていたので外気の取り込み口がふさがることもなく、外気の取り込みには影響ありませんでした。
また、最低気温マイナス15度を記録しましたが、サーバ室が冷えすぎて困るということもありませんでした。
でも、いろんな問題は起こり、現場にいる私たちは大変でした。まず、積雪3メートルでした。石狩はそんなに雪が降らないと聞いていましたが、だまされました。
巨大なつららができて、高所作業で取り除きました。これを毎年やらなければいけないのはゆううつです。衝撃的だったのは、建物の中にもつららができたことです。
それから結露対策。サーバを室内に持ってくると結露してしまうので、まず8時間ほどサーバ室と同じ温度の部屋に寝かせてから設置しました。
不法侵入の跡もありました(笑)。 この足跡はキツネなんだそうです。
「日本一データセンターを見た男」が語る
野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 増永直大氏。
ムーアの法則というのは、半導体の集積度は18カ月毎に倍になるというもの。5年で10倍、20年で1万倍になる。これがいまだにずっと続いています。
これをデータセンターから見ると、どんどん高集約、高密度になっている。消費電力が増え、空調能力が増え、床下が低く、天井が高くなるということ。
データセンターに要求されるレベルはどんどん上がってきていて、1980年代、1990年代に作られたデータセンターや、オフィスビルを改造するのでは電力や床荷重などが持ちこたえられず、専用の建物を造らないといけなくなってきています。
ただ、昔メインフレームでパイボーラというのがあって、これがすごい熱を発するのでこのままだとメインフレームのエンジニアは水冷の配管工になると言われていたが、CMOSになってそうならなかったことがあります。データセンターもこのままいくのかどうかはよくわからないところです。
パネルディスカッション「DC各社拠点長がセンター自慢」
■NECビッグローブ 基盤システム本部 児山正之氏。
データセンター自慢なのですが、データセンターが古くてなかなか自慢するところがなくて。運用周りの方の話をしようと思います。
古いデータセンターに適した省エネ技術はいろいろ実用化されていて、ラックのブランクパネルや左右のシャッター、ホットアイルとコールドアイルを分けて空調効率を良くするとか。空調設備には高効率空調機を使うと、かなりPUEも改善されます。
これに加えてサーバ仮想化、省エネサーバの導入、電力抑制ソフトや稼働しないサーバの電源オフにするなど、これをぜんぶやって、手作りのセンサー設置もやって温度、電力を測定しています。
その結果、2010年あたりでPUEがずいぶん下がりました。さらにもう一押ししたいということで、空調機のコンプレッサーと風を送るファン、これに着目して調べてみました。要するに空調機の管理パネルのメーターを読みました(笑)。
電力がナンボで効率ナンボという値を一年間まとめてみて、冬場や夏場で空調機の運転モードによって効率のいい運転とそうでないのがあり、それを目で見えるようにして効率がいい状態で動くようにしたら、2011年はさらにPUEが改善しました。
温度と電力量を計測し、季節に応じた省エネ運転を「発見する」。それを空調機の台数や吹き出し温度などを含めて「頭脳制御」します。これは自動制御できないので(笑)。すると古い設備でもずいぶんPUEが改善するんだよ、ということです。
■ビットアイル iDC本部 品川オペレーション部 本田崇氏。
ビットアイルは2001年から都市型データセンターをやっていまして、いろんなお客様がデータセンターに日々やってこられるので、そうしたお客様のためを思った運用を紹介します。
当社の受付は、これから仕事をしようというお客様の気持ちをなごませています(笑)。また、おしぼりを置いたり、傘を貸し出したり、ということもやっています。
サーバ室内も便利に使っていただきたいということで、いろいろ用意しています。
データセンターでの作業が多いのは深夜だったりすることもあって、サロンにはマッサージチェアを置いています。これは使われる頻度も高くてですね、ぜひこうした部分にも注目していただきたいですね。でも社員は使えないので、私は日々マッサージチェアを磨いています(笑)。
■さくらインターネット 運用部 宮下頼央氏
細かなところにこだわっている、というテーマで紹介します。
まずは電気室の窓。ドアにのぞき窓を付けて見学しやすいようにしています。
配線パネル。いつでもメンテできるように掲示されていますが、同業者に見られるといやだなと、見学のときはこうなっています。
雪が深くて帰れないときのために、データセンターには畳の部屋も作ってもらいました。帰れないときはここで仮眠させてもらってます。
■セコムトラストシステムズ 業務サービス本部 神戸雄一氏
東京の都下にあるデータセンター、右が96年竣工の耐震構造、左が2010年竣工の免震構造で、まんなかに耐震構造と免震構造のあいだをつなぐ渡り廊下があります。
渡り廊下の端がじゃばらになっていて、大きい地震が来たときにはここで吸収します。
3000KVAの大きな出力のディーゼル発電機を2台持っていて、いざというときに発電します。いま3台目を導入するところです。
それから、ウォークスルーの顔認証を導入しようとしています。今後商品化していきたいなと思っています。データセンターにお客様がいらっしゃったときに、いちはやく認識できるようになどです。
ただまだ試験段階で、カメラや照明の位置などのせいで顔を間違えてしまったこともあります。
■さくらインターネット 代表取締役 社長 田中邦裕氏
(司会として)インフラなどの勉強会がいろいろ開催されていますが、どちらかというとWeb系だったりします。もっとデータセンターの人たちが組んで情報交換することで、効率も上がってトータルの電力も下がって、といった全体に良い方向になるのではないかと思います。
このあと懇親会もありますので、そこでぜひ情報交換したいと思っています。
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