WASIのフルスペルを「WebAssembly System Interface」から「WebAssembly Standard Interface」へ変更しようという提案は延期に
WebAssemblyはもともとWebブラウザ上で高速に実行可能なバイナリフォーマットとして登場しました。高い実行性能やCPUアーキテクチャに依存しないポータビリティ、高度なセキュリティなどの利点を持ちます。
この優れた利点を持つWebAssemblyをWebブラウザ上だけではなく、サーバやデスクトップ環境でも実行可能にしようと2019年4月に登場したのがWASI(WebAssembly System Interface)と呼ばれる技術です。
参考:WebAssemblyをWebブラウザ以外の実行環境へ。システムインターフェイスへのアクセスを可能にする「WASI」の策定開始。Mozillaが呼びかけNode.jsらが賛同
2019年11月には、このWASIを推進する団体「Bytecode Alliance」が発足します。
参考:WebAssemblyをあらゆるプラットフォームでセキュアに実行できるようにする「Bytecode Alliance」発足。インテル、Mozilla、Red Hatなど
そして現在はWASI Preview 2とWASI Preview 3と呼ばれるWASIの次世代仕様の策定と実装が進んでいるところです。
参考:WebAssemblyにスレッドやコンポーネントモデルなど導入へ、Bytecode Allianceがロードマップを公開
WASIはWebAssembly System Interfaceのまま
このWASIのフルスペルである「WebAssembly System Interface」を「WebAssembly Standard Interfaces」に変更しようという提案が2023年10月にW3C WebAssembly Community Groupで行われました。
これはWASIのインターフェースが持つであろう仮想化的な特性やモジュール性を名前に反映させた方がいいのではないか、という考えに基づくものと説明されました。GitHub Issue上でいくつかの議論が行われています。
これが提案された理由として、おそらくWASI Preview 2の議論の影響が強いのではないかと想像されます。
その後、11月16日に行われたWASIに関するビデオカンファレンスにおいて、WASI Preview 2が登場しつつあるこのタイミングでの変更は混乱を招く可能性があるため、まずはWASI Preview 2を無事にリリースしてから再考しようということになりました。
ということで、現時点ではWASIのフルスペルは引き続きWebAssembly System Interfaceとなりますが、もしかしたらこの先、WASI Preview 2が登場したタイミングでWebAssembly Standard Interfaceに変わるのかもしれません。
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