Java仕様の決定に関わるエグゼクティブコミッティに「日本Javaユーザーグループ」の選出が確定。立候補理由や今後の活動を聞いた
Javaはその仕様策定の過程で、Javaに関係する企業やJUG(Java User Group)と呼ばれるコミュニティなどの組織、個人開発者などが多数参加し議論が行われるJCP(Java Community Process)と呼ばれるプロセスがあります。
Javaが長い間、発展と進化を遂げてきた理由に、このオープン性があります。
このJCPの中で、特に仕様策定の推進や決定の役割を担うのがExecutive Committee(エグゼクティブコミッティ/執行委員。以下、JCP EC)です。
そして今年、2023年のJCP ECの選挙に日本Javaユーザーグループ(以下JJUG)が立候補し、先月(11月)に発表された選挙結果によって、JJUGがJCP ECに選出されたことが確定しました。
現在のJCP ECは18席のメンバーで構成されており、JJUG以外のJCP ECメンバーとして、ARM、富士通、IBM、Amazon.com、ブラジルのJUGであるSoJavaなどが選ばれています。
JavaというITにおいて重要な技術の仕様策定に、日本のコミュニティが主要なメンバーとして関わるというのは快挙と言ってよいでしょう。
JJUGがJCP ECに立候補した経緯、そしてJCP ECの一員として今後どのような活動を考えているのか、JJUGにメールで取材をしました。
JJUGのグローバルな活動が認められ立候補を勧められた
質問 JJUGがJCP ECに立候補した理由や経緯について教えてください。
回答 JJUGは2007年に設立されたJavaエンジニアのコミュニティで、世界的にみても規模の大きなJUGのひとつです。JJUG CCC(編集注:JJUG Cross Community Conference:例年2回、春と秋に開催する日本最大のJavaコミュニティイベント)などの数百人を超えるイベントを10年以上にわたって継続的に開催している実績があります。
JJUGでは、これまでも海外のコミュニティイベントへの参加や、Java ChampionやOracle ACEなどに選ばれるエンジニアの輩出などを通じて、グローバルのJavaコミュニティと関係を作ってきました。その甲斐あってJJUG CCCのために来日する人も増えており、日本のエンジニアがグローバルとの距離感なく意見交換できるように意識してきました。そしてこれまでの数年間は、JCPにもメンバーとして参加してきました。
そういった活動をしている中で、JCPの運営をしているPMO(Program Management Office)メンバーであるHeatherさんが、JCP ECに立候補してはどうかと勧めてくれたことがきっかけでした。
JCPはオープンな意識決定プロセスであるため、なるべく多様な背景を持つメンバーの参加を求めています。そういった中でJJUGがJCP ECに選ばれたことは、これまでの我々の活動の成果だと考えています。
質問 JCP ECでは具体的にどなたが、どのような活動を行うご予定でしょうか。
回答 JCP ECでは年に6回程度のオンラインまたは対面でのミーティングと、標準仕様を決定する投票を行います。これにはJJUGのリーダーである谷本、もしくはサブリーダー、幹事メンバーが参加します。
ただし、あくまでもJJUGの代表としての参加なので、JJUGメンバーの意見を反映させるべきだと考えています。これをリアルタイムに取りまとめることは難しいので、今後は、月1回のナイトセミナーや年2回のJJUG CCCの場などを通じて意見を集めたいと思っています。
JCP ECになることで、より明確にグローバルにプレゼンスが出る
質問 JJUGがJCP ECで達成したい目標などあれば、教えてください。合わせて、JJUGのメンバーやメンバー以外の方へ呼びかけたいことなどがあれば、教えてください。
回答 JJUGという日本のエンジニアコミュニティがJava開発で重要な位置付けにある、ということ自体を通じて、日本のエンジニアの皆さんにオープンソースとの関わりなどを感じてもらいたいです。特にJCPは個人でもメンバーになることができるので、ぜひ積極的に登録して参加して欲しいです。
日本では、グローバルなオープンソースコミュニティとの関わりに積極的ではないところがあります。例えば、日本の元号が変わった際にJavaの和暦処理にバグが入ったり、日本ではまだ人気が根強かったStrutsが開発停止になって話題になったりしたことがありました。そのような機会にも、もし日本のコミュニティやエンジニアがグローバルなコミュニケーションに参加できていれば、また違った判断になった可能性があります。このような、主に日本独自のニーズであっても、世界中のどこかには同じニーズがあるはずだと信じて発信していければと考えています。
また、JCP ECになることで、より明確にグローバルにプレゼンスが出るため、海外で開催されている大規模なイベントを招致することや、より多くのエンジニアに日本に訪れてもらい、コミュニケーションを取れるようになると期待しています。
最後になりますが、昨今では残念ながら「Java」は古臭い言語だと思われています。しかし実際には、現在も半年ごとに継続的にアップデートされており、例えばJava 21の開発には、Oracle以外にも、Red Hat、SAP、Google、Amazon、ARMなど、さまざまな企業が参加しています。25年以上も培ってきた技術を、これだけ多くの企業が発展させようとしていることは、もっと知られていいと思います。
この先もさらにコンテナやサーバレス環境でもより高速・効率的に利用できるような対応が進んでいます。Javaを採用する企業が増え、それを使うエンジニアの皆さんがハッピーになることが、JJUGとして願っていることです。
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