JAMスタックのNetlify、静的サイトジェネレータ開発元のGatsby買収を発表。Webサイトホスティングサービス強化へ
Webサイトのホスティングサービスを提供するNetlifyは、静的サイトジェネレータGatsby.jsの開発元であり、GatsbyをベースにしたWebサイトホスティングサービスを提供しているGatsbyの買収を発表しました(Netlifyの発表、Gatsbyの発表)。
We’re thrilled to announce that we have acquired Gatsby Inc.!
— Netlify (@Netlify) February 1, 2023
Together we will build the future of composable, and empower developers with flexibility and choice in building composable web experiences. https://t.co/SCgEWGbpTR
NetlifyはJAMスタックベースのWebサイトホスティング
Netlifyは、JAMスタックと呼ばれるアーキテクチャを用いたWebホスティングサービスを提供するベンダです。
JAMスタックとは、WebサイトのWebページを静的なHTMLファイルとして生成し、Webページ上の動的な要素についてはHTMLに埋め込んだJavaScriptからバックエンドサーバのAPIを呼び出すことで実現します。
このアーキテクチャの利点は、静的HTMLをWebサーバから配信するだけでWebサイトを公開できるため、CDNなどを用いたスケーラブルかつ安定したなWebページの配信が可能で、しかもWebサーバ側に複雑なロジックがないためセキュリティ面でも堅牢となること、などが挙げられます。
Netlifyでは、サーバサイドでの静的HTML生成あるいはサーバサイドレンダリングのためのフレームワークとしてReact、Vue、Nuxt、Gatsby、Hugoなど、ほとんどすべてのフレームワークに対応しています。
また同社はホスティングの新しい選択肢として昨年(2022年)4月にDeno Deployを採用したサーバレス方式の分散ホスティングも開始するなど、ビジネスの強化を進めてきました。
同社のサービスはeコマースサイトや企業のWebサイト、業務アプリケーション、メディアなどさまざまなビジネス用途に使われています。
オープンソースの開発から始まったGatsby
一方、Netlifyに買収されるGatsbyは、創業者がReactの登場に刺激を受け、これを用いた静的サイトジェネレータのGatsby.jsをオープンソースとして開発したことが創業のきっかけになっています。
同社のWebサイトホスティングサービスもJAMスタックで構成され、当然のことながらGatsby.jsがベースになっていますが、Next.js、Vue、Svelte、Remix、Astroなどさまざまなフレームワークにも対応しています。
そしてもう1つ、Valhalla Content Hubと呼ばれる重要な機能が備わっています。
Valhalla Content Hubは、WordpressやShopifyなどのさまざまなサービスやAPIに接続し、GraphQLを用いて操作することで、Webサイトのデータソースとして用いることができる機能を提供します。
これにより複数のデータソースを統合しつつ、高速なWebサイトを構築できるのがGatsbyの大きな特徴です。
なぜNetlifyはGatsbyを買収するのか?
両社の特長を見た上で、NetlifyによるGatsbyの買収が合意された理由は2つ考えられます。
1つ目は両社がおおむね補完関係にあるという点です。
両社のビジネス領域はJAMスタックの仕組みを用い、複数のフレームワークに対応したWebサイトのホスティング領域として重なっています。
ただし、どちらかといえばNetlifyはWebサイトのホスティングを基盤として発展させようとしている一方、GatsbyはGatsby.jsやValhalla Content Hubなどソフトウェアやサービス開発による発展を志向してきたといえます。
この両社の組み合わせによってJAMスタック領域におけるWebサイトのホスティング基盤とサービス開発の両方をバランス良く発展させていけるようになると見られます。特にNetlifyにとってValhalla Content Hubによるデータソースの統合機能はサービス強化にとって魅力的ではないかと考えられます。
2つ目は、Webサイトのホスティング領域における競争激化が始まっていることでしょう。
JAMスタックの領域を広くサーバサイドJavaScriptのサービス分野と見れば、Next.jsの開発元であるVercelやDenoによるDeno Deployをはじめ、大手クラウドベンダからCloudflareやFastlyなどのCDNベンダまでサービス展開をし始めていますし、新興のBunもエッジホスティングへの参入を計画しています。
こうした中で、より早期に規模の拡大とサービスの充実を実現することで競争優位に立つことは、生き残るために重要です。今回の買収は両社ともにそうした競争環境を意識した結果といえるのではないでしょうか。
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