Deno、JavaScript/TypeScriptのためのデータストア「Deno KV」発表。Deno本体にSQLiteを統合、分散環境では強い一貫性も提供
サーバサイドやエッジでのJavaScriptランタイムを提供するDenoは、Deno本体に統合したJavaScript/TypeScriptのためのデータストア「Deno KV」を発表しました。
これまでDenoでアプリケーションを開発し実行する際には、データを保存するためのデータベースをユーザーが用意する必要がありました。
Deno KVはDenoに統合されたデータストアとして、JavaScriptの変数や配列変数、オブジェクトなどのあらゆる構造化された値が保存可能なキーバリュー型のデータベースとして提供されるため、ユーザーがデータベースを用意しなくてよくなります。
Announcing Deno KV: A Global Database for Global Apps!
— Deno (@deno_land) April 28, 2023
Read data in milliseconds, worldwide
Zero setup and zero provisioning
ACID transactions
Designed for JavaScript & TypeScript
Built on FoundationDB and SQLite
Read more → https://t.co/XoRzT21dKs
Deno KVは、4月29日にリリースされた「Deno 1.33」からDeno本体に統合され、APIから簡単かつ高速に利用できるようになりました。
ローカルではSQLite、分散エッジではFoundationDBが動作
Deno KVは、Deno単体で利用した場合と、Deno Deployによって世界中に分散されたエッジ環境上で利用した場合で、それぞれバックエンドデータベースが異なります。
ローカル環境などでDenoを単体で利用する場合、Deno KVはDenoに統合されたSQLiteデータベースを用いて動作します。SQLiteは設定不要のコンパクトかつ高速なデータベースであり、Deno KVも同様に設定不要で高速に動作します。
一方、Deno Deployによる世界中に分散されたエッジ環境のDenoでアプリケーションを実行する場合、それぞれのエッジのDeno KVは分散データベースであるFoundationDBのノードとして動作します。
FoundationDBは、もともとAppleがオープンソースとして公開したNoSQLデータベースです。分散環境で高速に動作しつつトランザクション操作により全体としてデータの強い一貫性を実現できます。
Deno Deploy上のDeno KVは、Deno Land社がマネージドなデータベースサービスとして提供するFoundationDBをバックエンドとして利用するため、やはり設定や運用を気にすることなく、高速かつスケーラブルで強い一貫性を実現したデータストアが利用可能です(結果整合性の選択も可能です)。
開発者は、トランザクション処理について意識する必要はあるものの、ローカル環境のDenoでDeno KVを用いて開発したアプリケーションを、そのままDeno Deployへデプロイして世界中のエッジで実行される分散アプリケーションとして実行することができるわけです。
Denoは、分散環境におけるDeno KVのデモアプリとして、お絵かきアプリを紹介しています。これは世界各地のエッジ上のDenoでお絵かきアプリが実行されつつも、分散データベースとしてのDeno KVにより全体が1つのまとまったデータとして参照できる、という動作を示したものです。
A little Deno KV app https://t.co/X1VTPEuSrN
— Deno (@deno_land) May 5, 2023
The images are monotone and low resolution to fit in the alloted 2kb maximum size per entry in the Deno KV database.
Source code here https://t.co/ApYYdVKH5C
Visit https://t.co/XoRzT21dKs to join the waitlist for Deno KV access. pic.twitter.com/jLH6X0xkXW
Deno KVは現在ベータ版として申し込みを受付中です(ウェイトリストへの申し込み)。
エッジ環境での分散データストアの競合が始まる
CDNのような分散したエッジを統合するデータベースとしては、CloudflareがSQLiteのレプリケーション機能を用いた「Cloudflare D1」を発表しています。
参考:Cloudflare、CDNエッジで稼働するSQLiteベースのRDB「Cloudflare D1」発表。ユーザーの近接CDNエッジに自動でレプリカを分散配置、高速アクセスを実現
さらに、Next.jsの開発元として知られるVercelもRedisをベースとしつつ分散環境にも対応したデータストレージの「Vercel KV」を発表しています(後日、別記事で紹介する予定です)。
エッジ環境に対応したJavaScriptランタイムの相次ぐ登場に続いて、今度は分散データベースの分野での商用サービスの競合が始まろうとしています。
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