マイクロソフト、クラウド専用チップでAureの仮想マシンを強化する「Azure Boost」正式版に
マイクロソフトは、従来ハイパーバイザで行われていた処理を同社が設計したクラウド専用のシステムオンチップ(SoC)にオフロードすることで、より高性能なネットワークやストレージ、強固なセキュリティなどを実現する「Azure Boost」を正式版としたことを発表しました。
Azure Boostは、専用のSoCを搭載した「Microsoft Azure Network Adapter」 (MANA)と呼ばれるネットワークアダプタとソフトウェアによって実現されています。
上の画像がMANAです。この専用のハードウェア上にI/O処理や暗号化処理など、これまでハイパーバイザーで行われていた処理がオフロードされることで、仮想マシンの性能向上とともに、ネットワークやストレージへのアクセスの高速化、セキュリティの強化、メンテナンス期間の短縮などが実現されます。
具体的には、Azure Boostを用いた仮想マシンでは、最大で200Gbpsのネットワーキング性能、ストレージ性能では、ローカル ストレージは最大 17.3GBpsのスループットと380万IOPS、リモートストレージは最大12.5GBpsのスループットと 650KIOPSを実現。
さらにMANAはData Plane Development Kit(DPDK)にも対応しており、パートナーやユーザーがDPDKを用いた機能拡張も可能とされています。
AWSはNitro Systemを10年前から採用
専用チップにハイパーバイザやネットワーク処理をオフロードする仕組みは、AWSが遅くとも10年前の2013年には同社が「Nitro System」と呼ぶ仕組みで実現し、最新版はすでにNitro v5まで進化しています。
マイクロソフトはAzure Boostでこれを追うことになるわけです。
参考:[速報]AWS、クラウド基盤用のカスタムチップ「AWS Nitro v5」を発表。パケット処理能力など向上。AWS re:Invent 2022
マイクロソフトは今年(2023年)1月に、データセンター基盤向けプロセッサDPU(Data Processing Unit)開発ベンダのFungibleの買収を発表しています。
FungibleのDPUは、ストレージやネットワークへのアクセス処理などを高速に行う機能を備えていることから、Azure Boostおよびそれを構成するMANAには同社のDPUが使われていると推測されます。
参考:マイクロソフト、「AWS Nitro」対抗のクラウド基盤用プロセッサを自社開発か、DPUベンダのFungible買収を発表
クラウド基盤の機能をSoCにオフロードする仕組みは、AWSがNitroで開始し、Azureも今回Azure Boostを正式版としましたが、Google Cloudも、2022年にインテルと共同開発したSoCの採用を発表済みです。
参考:Google Cloud、インテルと共同開発したASIC「Infrastructure Processing Unit(IPU)」採用を発表。FPGAベースのSoCでサーバ本体の処理をオフロード
Azure Boostの発表によって、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureのクラウド大手3社がすべてクラウド基盤に専用SoCを搭載する、ということになるわけです。
あわせて読みたい
大手クラウドはクラウド専用チップで戦う時代へ。各社がクラウド基盤に専用SoC、サーバにArm、AI処理に独自プロセッサを相次いで採用
≪前の記事
グローバルのクラウドインフラ市場シェア、この3カ月でマイクロソフトのシェアが2%増加。2023年第3四半期、Synergy Researchの調査結果