TikTokのByteDance社がパブリッククラウドに参入。「Volcano Engine」(火山引擎)クラウドは仮想マシン、オブジェクトストア、データベースなど企業向けに提供
動画共有サービスのTikTokを提供するByteDance社は、クラウドサービス「Volcano Engine」(火山引擎)の提供を先月から開始し、パブリッククラウド市場に参入しました。
Volcano Engineが提供するクラウド上のサーバとしては、仮想マシン、ベアメタルサーバ、GPUサーバの3種類。マルチアベイライビリティゾーンによる高可用構成などが可能。
OSは同社がクラウド用に最適化したとされるveLinuxを用います。
veLinuxはDebian 10との互換性を持ち、ホットパッチに対応。最適化によってコンテキストスイッチ、I/O性能などを含む性能が全体に15%から25%程度向上しているとのこと。
ストレージはNVMe SSDを用い数万IOPSの性能とレプリケーションによる99.99999%の信頼性、オンデマンドでの容量拡張に対応。また、これとは別に大容量で高信頼(イレブンナイン)、低価格なオブジェクトストレージも提供されます。
MySQLとRedisのマネージドサービスを提供し、コンテナ向けのサービスとしてはコンテナレジストリとKubernetesのマネージドサービスであるVolcengine Kubernetes Engine(VKE)などを提供。
そのほかビッグデータ向けのデータ分析サービス、動画配信サービス、CDNなども用意されています。
当面は中国国内向けに展開か
ByteDanceは北京に本社を置く中国の企業です。2020年には、米トランプ政権が米国市場でのTikTokの使用禁止措置を予告するなど、米中貿易摩擦において同社を巡るいざこざがあったことを記憶している読者も多いのではないでしょうか。
パブリッククラウドは中国でも大きな成長を見せており、アリババ、Tencent、Baiduらが主要なプレイヤーとなっています。
なかでもアリババはほとんど中国市場で活動しつつも、その売り上げはグローバルでもIBMを抜いてAWS、Azure、Googleに次ぐ4番目のシェアを獲得していると報告されています。
参考:クラウドインフラ市場、AWSのシェアトップは変わらず。アリババ、Tencent、Baiduら中国勢が高い成長を見せる。2021年第1四半期、Synergy Research Group
ByteDanceのパブリッククラウド参入は、この高成長市場を見逃すべきではないと同社が考えた結果だといえるでしょう。
現時点のVolcano EngineのWebサイトを見る限り、説明はすべて中国語であるため、当面は中国国内向けサービスとして展開されるものと推測されます。
とはいえ、コンシューマ向けのTikTokを成功させた同社が、主にエンタープライズ向けのように見えるサービス群を抱えたパブリッククラウドをこれからどのように展開させていくのか、注目したいと思います。
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