SAP、ロシアにあるクラウドのシャットダウンを決定。顧客はデータの削除もしくは送付、ロシア国外への移行のいずれかを選択
SAPはモスクワにある同社クラウドのシャットダウンを決定し、ロシアの非制裁対象企業に対し、データの削除、送付、ロシア国外のデータセンターへの移行のいずれかを選択できるようにすると発表しました。
同社はロシアのウクライナ侵攻に反対するための制裁措置として、ロシアおよびベラルーシにおける同社製品の販売をすべて停止すると3月2日に発表しました。この発表にはクラウドサービスの提供停止は含まれていませんでしたが、3月24日にはクラウドサービスの提供についても停止することを明らかにしました。
SAP continues to stand in solidarity with the people of Ukraine. Read our full statement: https://t.co/Bu6x8NLcNL pic.twitter.com/6GdnqS1ywQ
— SAP (@SAP) March 25, 2022
4月19日には、クラウドのシャットダウンに向けた手続きについて、次のような内容が示されました(プレスリリースの日本語訳から引用)。
データセンター内のデータは、SAPではなく顧客に帰属するものです。そのため、クラウドの停止に伴い、制裁対象外の企業に対し、データの削除・送付、ロシア国外のデータセンターへの移行のいずれかを選択できるようにしました。移行を選択したロシアの企業は、現在のサブスクリプション期間満了時に契約を更新しないこととします。
ロシアの制裁対象外の企業(Publickey注:米国とEUの協調によって制裁対象とされる団体や企業以外の企業と想定される)には、上記のように比較的スムーズな終了手段が提供されるようです。一方、制裁対象となる企業に対しては上記のような手続きは示されず、どのような契約終了となるのかは明らかになっていません。
Publickeyが調べた範囲では、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloudなどの主要なクラウドサービスでロシアにデータセンターを置いているところはほかにありません。SAPは2018年、モスクワにクラウドデータセンターを開設していました。
クラウドは登場以来ずっと右肩上がりで成長してきており、これまでクラウドサービスを提供していた主要なベンダが市場から撤退するということはなかったはずです(過去に例えばVMwareがvCloud Airに失敗して日本市場から撤退する、といった小規模なものはありましたが)。
いま私たちはおそらく、クラウドの歴史上初めて主要なソフトウェアベンダの提供するクラウドサービスが特定の国から完全に撤退するという事実を目の当たりにしているのだと言えそうです。
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