オラクル、OpenJDKに静的なネイティブイメージの生成機能を組み込む方針を明らかに。GraalVMのOpenJDKへのコントリビュートで

2022年11月1日

オラクルは先月(2022年10月)に米ラスベガスで開催したJavaOne 2022で、GraalVM CEのJava関連コードをOpenJDKコミュニティに寄贈すると発表しました。

参考:[速報]オラクル、OpenJDKコミュニティにGraalVM CEのJava関連コードを寄贈すると発表。JavaOne 2022

このとき、GraalVMのJavaのJITとネイティブイメージの機能がOpenJDKに寄贈されると説明されましたが、より詳細な説明が10月25日付けのGraalVMのブログに投稿された「Oracle Contributing GraalVM Community Edition Java Code to OpenJDK」で行われています。

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この中で、将来のOpenJDKでは静的なネイティブイメージの生成機能を備えるようにする、という方針を明らかにしています。

GraalVMのJava JITコンパイラとネイティブイメージ関連を寄贈

GraalVMは10年前、Oracle Labsの研究プロジェクトとして始まったもので、OpenJDKにはない2つの大きな特徴を実現しました。

1つ目は、JavaだけでなくPythonやRuby、R、JavaScriptなど複数のプログラミング言語のランタイムとなる「多言語対応」です。GraalVMだけでさまざまなプログラミング言語の実行が可能です。

そして2つ目が、実行時に動的にCPUのネイティブコードを生成することで実行速度を高速化するJIT(Just-in-Time)コンパイラだけでなく、実行前にコードをコンパイルすることで、高速に実行可能な静的ネイティブイメージを生成する機能を備えていることです。

そしてOpenJDKに寄贈されたのは、Javaに関するJITコンパイラとネイティブイメージの部分であることが改めて説明されました。下記は「Oracle Contributing GraalVM Community Edition Java Code to OpenJDK」からの引用です。

Oracle plans to contribute the most applicable portions of the GraalVM just-in-time (JIT) compiler and Native Image. Oracle does not currently intend to contribute the polyglot technologies supporting other languages such as Python, Ruby, R, and JavaScript. Additional details will follow in the coming months as we move forward through this process.

オラクルはGraalVMの最も応用できそうな部分としてネイティブイメージの寄贈を計画しています。Java以外のPythonやRuby、R、JavaScriptなどをサポートする多言語対応のテクノロジーは寄贈しないつもりです。今後、進捗し次第詳細を説明していきます。

静的なネイティブイメージの実現に進む

今回の寄贈でいちばん注目されたのが、GraalVMのネイティブイメージの機能がOpenJDKに寄贈されることで、OpenJDKがネイティブイメージ生成機能を持つことが期待される、ということでした。

果たしてオラクルは今回、OpenJDKがネイティブイメージの生成機能を備えることを目指すと、次のように明確に方針を表明しました。

Oracle plans to contribute the most applicable parts of the GraalVM Native Image implementation to the OpenJDK Community. Once contributed, the Native Image technology would continue to be developed within the scope of an OpenJDK Project, using the same processes and methods as other OpenJDK development.

オラクルはGraalVMの最も応用できそうな部分としてネイティブイメージの実装をOpenJDKコミュニティに寄贈することを計画しています。コントリビュート後は、OpenJDKの他の部分の開発と同じプロセスと方法を用いて、OpenJDKプロジェクトの範囲内でNative Image技術の開発が継続されます。

Oracle plans to evolve the Native Image technology in the OpenJDK Community to track the Project Leyden specification as it progresses to pave a path to fully-static images in a future release of the Java SE Platform specification.

オラクルはネイティブイメージのテクノロジーをProject Leydenの進捗に合わせてOpenJDKコミュニティにおいて進化させようとしており、将来のJava SEプラットフォーム仕様において、完全に静的なイメージの実現に進もうとしています。

Project Leydenは、Javaの起動時間やピーク性能に到達するまでの時間をできるだけ短くすることを目指すOpenJDK内のプロジェクトです。

Dockerコンテナを基盤としたクラウドネイティブの世界においては、ソフトウェアが瞬時に起動して高速に実行できる性能が重視されます。クラウドネイティブの時代にもJavaが有力なプログラミング言語とその実行系であるために、Project Leydenは重要な責任を負っているのです。

瞬時に起動し、高速に実行できる最も効果的なソフトウェアの形態は、コンパイル済みのネイティブイメージを用いることであることは明らかです。

それゆえ、Project LeydenがGraalVMからのコードの寄贈を受け、静的なネイティブイメージの生成を目指すことは自然なことでした。

そしてGraalVMのネイティブイメージのテクノロジーがOpenJDKに寄贈されることで、ネイティブイメージの生成機能を実現する時間は大幅に短縮されるはずです。

と同時に、すでに実績のあるGraalVMの実装が寄贈されることで初期バージョンからある程度は安定した動作が期待できそうです。

静的なネイティブイメージ機能がOpenJDKに搭載されれば、ほぼすべてのJavaディストリビューションにその機能が搭載され、ほぼすべてのJava開発者はネイティブイメージの生成をできるようになるはずです。

そうなると、Javaはクラウドネイティブにおいて有力なプログラミング言語と見なされるだけでなく、コンパイラ型の言語としてこれまであまりJavaでは書かれなかったような分野を含む幅広い用途に使われ始める可能性があるのではないでしょうか。

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GraalVMのテクノロジーを用いてJavaのネイティブイメージを生成することは、すでにQuarkusと呼ばれるフレームワークがRed Hatを中心に開発され、商用サポートも行われています。

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