クラウドネイティブの注目動向、eBPFとWebAssemblyの利用が広がる、Appleが人材のブラックホールに。CNCFアンバサダー @_inductor_氏に聞いた
Kubernetesの開発をホストするなどクラウドネイティブ関連のテクノロジーやソフトウェアを主導するCloud Native Computing Foundation(以下CNCF)は、2021年を総括するレポート「CNCF 2021 ANNUAL REPORT」を公開しました。
CNCFは2021年末現在でKubernetes、Prometheus、Envoy、ContainerDなどを始めとする120以上の開発プロジェクトをホスト。エンドユーザー数も順調に伸びています。
それぞれのプロジェクトもGraduateあるいはIncubation Levelへと、成熟や拡充されているとのこと。
内容の詳細はぜひレポートをご参照ください。
合わせてPublickeyでは、この1年のCNCFやクラウドネイティブの動向について、CNCFアンバサダーの@_inductor_氏に話をうかがいました。
eBPFやWebAssemblyの利用、Appleによる人材獲得の積極化など、興味深い内容をいただいたので、下記にうかがったの内容をまとめて紹介します。
eBPFの多様な利用化
Publickey CNCFやクラウドネイティブについて注目されている点について教えてください。
@_inductor_氏 「CNI」(Container Network Interface)であるCiliumやProject CalicoがeBPFを用いたkube-proxyの代替実装をサポートし、GKEやEKSでも利用可能になったり、Cilium Service MeshによるEnvoyなしでのサービスメッシュ実現(現在Beta testフェーズ)だったり、他にもNew RelicがPixie Labsを買収した後にeBPFを用いた追加デーモンなしでのObservabilityを提供するなど、業界としてもさまざまなeBPFの利用が広がってきています(参考:スライド「Kubernetesネットワーキング初級者脱出ガイド / Kubernetes networking beginner's guide - Speaker Deck」)。
KubeConのコロケイベントでも独立した「Cloud Native eBPF Day North America」が開催されるなど、コミュニティとしても力が入ってきていると思います。
WebAssemblyの利用がより現実的に
WebAssembly(以下Wasm)のクラウドネイティブ利用も広がってきています(参考:スライド「Containers at Edge and the future」、ブログ「ちょっとした疑問: Krustlet(Kubernetes)で動くWASMアプリケーションはコンテナか?」)。
このスライドではDockerランタイムを置き換える役割としてWasm VMがインスタンスとして動作し、Kubernetes上でワークロードの実行環境を提供するポイントに絞って紹介していますが、他にもIstio/Envoyの中で使われるProxy-WasmにてOCI Imageの可搬性や再現性をサービスプロキシでも利用するための取り組みが活発で、国内においてもマスタケさんが活躍されています。Wasm Dayもコロケイベントとしては何度か行われていますね。
また、Wasm実行環境の実装の1つであるwasmCloudがCNCF Sandboxプロジェクトに選ばれています。と、ここまで書いて、青山さんの記事「2022年に注目したいCloudNative関連技術:新春特別企画|gihyo.jp … 技術評論社」が非常によくまとまっていて、私としてはこれ以上説明できる気がしないです。詳しい説明はこちらに譲ります。
AmexがCNCFメンバーに。Appleは人材のブラックホール
Publickey CNCFのコミュニティの動向などはいかがですか?
@_inductor_氏 CNCFコミュニティの動向として注目したいのは、1つ目がクレジットカード大手のAmerican ExpressがCNCFメンバーになったことです。
2つ目はAppleが大きな採用のブラックホールになってどんどん人材を吸い込んでいることです。元Rancher Labsで現AppleのAlena Prokharchyk氏が2020年のKubeConのキーノート「Keynote: The Cloud Native Journey @Apple」で話していましたが、Appleは本気で社内クラウドのクラウドネイティブ化に力を入れているようです。
また、クラウドネイティブに関する基本的な知識とスキルを証明するKCNA試験(Kubernetes and Cloud Native Associate試験)ができたので、マーケットとしてのクラウドネイティブが意識される機会が増えそう(試験自体はクラウドネイティブ技術のセールスやビジネスパーソンが用語を理解するために使われる目的もあるので)です。
最後に、Kubernetes製作者の1人であるBrendan Burns氏がCNCFのTOC(Technical Oversight Committee)を卒業したことも大事な動向として挙げておきます。
Publickey ありがとうございました。
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