マイクロソフト、Linuxディストリビューションベンダ「Kinvolk」を買収。コンテナに最適化したLinuxやベアメタル対応のKubernetesのディストリビューションを提供

2021年5月10日

マイクロソフトは、LinuxやKubernetesのディストリビューションベンダとしてドイツのベルリンに本拠地を置く「Kinvolk」の買収を発表しました(マイクロソフトの発表Kinvolkの発表)。

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Kinvolkは2015年設立の新興ベンダです。クラウドネイティブに対応したオープンソースソフトウェアにフォーカスしており、同社が提供するコンテナに最適化されたLinuxディストリビューションの「Flatcar Container Linux」は、KivolkがCoreOSとともにコンテナランタイムのrktの開発に関わっていたことから、2018年2月にCoreOSがレッドハットに買収された際にCoreOSに代わるコンテナ向けLinux OSとしてコミュニティの受け皿になったとされています。

参考:Red Hatがコンテナ専業ベンダのCoreOS買収を発表、コンテナプラットフォームやKubernetes関連など強化へ

Kinvolkはまた、独自のKubernetesディストリビューションとして「Lokomotive」も提供。Flatcar Container Linux を含むKubernetes環境のためのソフトウェアがすべて含まれており、ベアメタル環境からAWSやMicrosoft Azureなどさまざまな環境に対応。

デフォルトでセキュリティ機能が強化され、またKinvolkによる迅速なアップデートの提供とインプレースアップデート機能などが組み込まれています。

マイクロソフトはKinvolkを買収後も、引き続き同社のオープンソースプロジェクトやコントリビューター、コミュニティ、パートナーなどに対して継続的な発展を約束しています。

マイクロソフト独自のLinuxとKubernetesディストリビューションを

マイクロソフトはこれまでオンプレミスで高いシェアを持つWindows OSとパブリッククラウドのMicrosoft Azureの相互運用によってハイブリッドクラウドのソリューションを推進してきました。

しかしその一方で、コンテナのレイヤでインフラを抽象化するKubernetesが登場し、これがハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドのソリューションを提供する重要なソフトウェアになりつつあります。

マイクロソフト自身も、Azure ArcでKubernetesを用いたハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドのソリューションを発表してます。Azure Arcは同社にとってハイブリッドクラウドとマルチクラウドを実現するうえで重要な位置を占める戦略的ソフトウェア製品です。

そのAzure Arcの中核に位置するのがKubernetesであることから、同社にとって今後Kubernetesの重要性がますます高まっていくことは間違いありません。

参考:[速報]マイクロソフト、「Azure Arc」発表。マルチクラウド基盤としてAWSやオンプレミスへもAzure DBをデプロイ可能、サーバやクラスタも統合管理。Ignite 2019

そしてKubernetesの実行環境としてはLinuxが事実上の標準です。であれば、マイクロソフトとしてLinuxとKubernetesへの関与をさらに強めなければならない、そう考えるのは自然なことです。

マイクロソフト自身も、KinvolkをAzure Kubernetes Service(AKS)やAzure Arcで活用していくと説明しています。「Microsoft acquires Kinvolk to accelerate container-optimized innovation」から引用します。

Microsoft is excited to bring the expertise of the Kinvolk team to Azure, where they will be key contributors to the engineering development of Azure Kubernetes Service (AKS), Azure Arc, and future projects that will expand Azure’s hybrid container platform capabilities and increase Microsoft’s upstream open source contributions in the Kubernetes and container space.

マイクロソフトはKinvolkチームの専門性をAzureに持ち込めることに大変わくわくしています。彼らはAzure Kubernetes Service(AKS)やAzure ArcおよびAzureのハイブリッドコンテナプラットフォームの機能を拡張し、Kubernetesとコンテナの分野でマイクロソフトによるアップストリームのオープンソースへの貢献を高めるうえで、これからのプロジェクトのエンジニアリング開発に重要な役割を果たすことになります。

前述の通り、マイクロソフトは既存のKinvolkのプロジェクトやコミュニティを維持していくことを明らかにしているため、Flatcar Container Linuxがいきなり「Microsoft Azure Container Linux」のような名称や位置付けで登場するようなことはなさそうです。

しかしKinvolkの買収は、マイクロソフトがMicrosoft AzureやAzure Arcのために自身で独自のLinuxディストリビューションやKubernetesディストリビューションを作る意思と能力を明らかにした、その第一歩であるように見えます。

追記:Azure Linux 3.0リリース、独自Armプロセッサに対応

2024年8月、マイクロソフトは(Flatcar Container Linuxとは別に)Microsoft Azureに最適化された「Azure Linux 3.0」の正式リリースを発表しました。

参考:マイクロソフト製の最新Linuxディストリビューション「Azure Linux 3.0」正式リリース。Azureに最適化され、Kernel 6.6を採用

また2024年10月には、独自Armプロセッサ「Azure Cobalt 100」対応OSの1つとしてFlatcar Container Linuxを挙げています。

参考:マイクロソフト、独自Armプロセッサ「Azure Cobalt 100」の仮想マシンを正式提供開始

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Junichi Niino(jniino)
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