Javaの長期サポート(LTS)版、次回は2年後に登場の見通し。オラクルがLTSのサイクルを3年から2年に変更提案
現在、Javaは3年ごとに長期サポート(LTS:Long Term Support)版がリリースされています。最新のLTS版は今週リリースされたばかりのJava 17で、その1つ前のLTS版はちょうど3年前の2018年9月にリリースされたJava 11でした。
この3年ごとに設定されたLTS版のリリースを、2年ごとに短縮しようという提案が行われています。
オラクルでJavaの顔ともいえるJava Platform Groupのチーフアーキテクトを担当しているMark Reinhold氏は、自分のブログに記事「Moving Java Forward Even Faster」を投稿し、LTS版のリリースサイクルを3年から2年にしようと提案。これをJavaの開発者コミュニティのメーリングリストにも投稿し、議論を開始しています。
またオラクルのJavaブログにも、同社のプロダクトマネジメント・シニアマネージャのDonald Smith氏が「Moving the JDK to a Two Year LTS Cadence」を投稿し、同様にLTS版のリリースサイクルを2年にする提案を行っています。
両方ともおおむね同様の理由を挙げてLTS版リリースサイクルの短縮を提案しています。
その理由をざっくりまとめると、6カ月ごとのフィーチャーリリースと3年ごとのLTSリリースというタイムベースのリリースサイクルを開始して4年。このサイクルでの開発が順調であること。その上で、企業は長期サポートがあるLTS版の利用を好む一方、LTS版の間隔が3年あるということは、その間に開発されたJavaの新機能がLTS版に取り込まれるのにも最長で3年待たねばならないということで、これはJavaの新機能が企業で使われるまでに時間がかかりすぎると。
そこでLTS版のリリースサイクルを短くし、LTS版を採用する企業により早くJavaのイノベーションを届けたい。
これが、LTS版のリリースサイクルを2年にする提案についての、おおまかな主旨といえます。
LTS版のリリースサイクルはコミュニティの合意で決まる
現在のLTS版のリリースサイクルが3年というのは、Javaコミュニティの中でのコンセンサスによって決まったものとされています。
ただし技術的にはコミュニティのコンセンサスがなくとも、特定のベンダが独自のサイクルでLTS版を出すことは可能です。
例えばあるベンダが「6カ月ごとのフィーチャーリリースのすべてで、当社がリリース後8年間はバグフィクスを提供することを約束する」と宣言し、実際にそれが実行できるのであれば、コミュニティで合意した3年ごとのLTS版のリリースとは関係なく、ベンダ独自の長期サポートによるLTS版をリリースすることは、理屈の上では不可能ではありません。
しかし現時点でJavaの開発はオラクルをはじめとするさまざまな企業や個人のコミュニティが関わっており、単独でLTS版を提供し続けられるような意思と能力を持つベンダはおそらくないでしょう(また、そうする動機もおそらく存在しないでしょう)。
それゆえにLTS版のリリースサイクルについてコミュニティでのコンセンサスがとられることになります。
とはいえ、オラクルはそうしたJavaコミュニティの中で最も多くの貢献をし、またリーダーシップも備えています。日本オラクルへの取材によると、LTS版のリリースサイクルを2年にしようという提案はコミュニティから前向きに捉えられているとのことで、おそらくこの提案はコミュニティに受け入れられ、どこかのタイミングで正式にLTS版のリリースが2年になるという発表が行われるだろうと思われます。
企業案件などではLTS版のリリースに気をつけた方がいいかも
そもそもLTS版のリリースサイクルが3年になったのは、それ以前のJavaのLTSの間隔の平均がおおむね3年程度だったから、だといわれています。
それを適切なタイミングで見直そうという提案が出てくるのは健全なことでしょう。
LTS版のリリースサイクルが2年になるとすると、次のLTS版は2023年9月登場予定のJava 21が該当します。
前述のように企業などにおけるJavaの採用ではLTS版が前提となるケースが多いはずです。そのため、LTS版のリリース時期が変わると開発対象となるJavaバージョンが変わる可能性があります。
Javaの案件を抱えている開発者などは、今回のリリースサイクルの変更について注意をしておいた方がいいかもしれません。
あわせて読みたい
Docker Desktop for Linuxを開発中とDocker社が表明。有料化の発表が好評だったとして機能強化など加速
≪前の記事
CentOS 8とバイナリ互換のRHELクローン「MIRACLE LINUX 8.4」が無償公開へ。今後のバグフィクスやアップデートも無償。CentOS 8の代替を狙う