CentOS 8とバイナリ互換のRHELクローン「MIRACLE LINUX 8.4」が無償公開へ。今後のバグフィクスやアップデートも無償。CentOS 8の代替を狙う
サイバートラストは、CentOS 8とのバイナリ互換のLinux OS「MIRACLE LINUX 8.4」を、無償ライセンスで公開することを発表しました。合わせて、2030年1月までのアップデートとCentOSからの移行ツールなども無償提供されます。
CentOS 8とはバグも含めてバイナリ互換
CentOS 8はRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL)との互換性を備える無償のLinux OSとして多くの個人ユーザーや企業ユーザーで利用されています。しかし今年末でサポートが終了し、公式のセキュリティフィクスやアップデートが提供されなくなるため、継続して安定したシステムを運用するには別のOSへの移行が求められていました。
今回発表されたMIRACLE LINUX 8.4は、RHELクローンのLinux OSとしてCentOS 8からの移行の受け皿になることを意図して開発されました。「商標の部分以外は、CentOS 8と完全にパッケージ名もバージョンも全く同じに揃えました。いわゆる、バグも含めて互換です、という状態」(サイバートラスト 執行役員 OSSビジネス本部 本部長 鈴木庸陛氏)。
MIRACLE LINUXは以前からRHELクローンのLinuxディストリビューションとして有償で販売されていましたが、無償化についてもCentOS 8からの移行を念頭に設定されたと説明されています。
同社は国内において約300万台のサーバでCentOSが稼働していると推計しており、今回のMIRACLE LINUX 8.4のOS本体とアップデートの無償化は、このCentOSの受け皿にMIRACLE LINUXがなることで同社が以前から提供してきた有償サポートビジネスの増加を期待したものです。
特に今回の発表ではMIRACLE LINUX 8.4がVMware ESXiの認証を取得していることも同時に発表されており、仮想化基盤を用いた企業ユーザーや大規模ユーザーへもアピールしています。
国内の実績あるLinuxベンダによる無償のディストリビューション
もともとサイバートラストは2000年にミラクル・リナックス社として企業向けのLinuxディストリビューションベンダの開発を開始し、それ以来ほぼずっとRHELベースもしくはRHELクローンのLinuxディストリビューションを提供してきました。2017年にサイバートラストと合併し、社名が現在の名称となりました。
国内のLinuxディストリビューションベンダとしては、唯一生き残った主要なベンダといってよいでしょう。
同社の主力製品であるMIRACLE LINUXは企業やデータセンターなどで使われていますが、特にデジタルサイネージや産業用のアプライアンス製品などの組み込み用途で高いシェアを持っており、この分野での比較的安定したライセンスビジネスとサポートビジネスが、同社がLinuxディストリビューションベンダとして生き残れた要因のひとつと見られます。
と同時に、こうした比較的安定したビジネスを持っていることが、今回のOS本体やアップデートを無償化することでCentOS 8の市場を取りに行くという大胆な判断の背景にあったとも言えそうです。
CentOS 8のサポート終了に伴い、海外でも無償のCentOS 8互換として「Alma Linux」や「Rocky Linux」などが登場してきています。国内のベンダからもこうした動きに対応して、実績のあるLinuxディストリビューションベンダから無償のCentOS 8互換ディストリビューションが登場したことは、特に国内ユーザーにとって歓迎すべき動きであることに間違いないでしょう。
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