SUSEがRancher Labsの買収を発表。Rancherは引き続きマルチベンダサポートを維持
主要なLinuxディストリビューションベンダとして知られるSUSEは、Rancher Labsの買収を発表しました
#BreakingNews: @SUSE to acquire @Rancher_Labs a leader in #Kubernetes management, and will become world's largest independent organization exclusively dedicated to powering digital transformation with #opensource and cloud native solutions https://t.co/RneTNslUbT pic.twitter.com/cgGIc9k2D2
— SUSE (@SUSE) July 8, 2020
Rancher Labsは、Kubernetesによるコンテナオーケストレーションを容易にする運用管理ツール「Rancher」などを提供するオープンソースベンダ。
軽量なKubernetsディストリビューションの「K3s」や、Kubernetesに対応したコンテナベースの分散ブロックストレージ「Longhorn」、Kubernetesに特化した軽量なLinux「k3OS」など、関連ソフトウェアの開発も積極的に行っており、コンテナ関連の主要ソフトウェアベンダと言ってもよいでしょう。
買収による利点について「SUSE TO ACQUIRE RANCHER LABS, BECOMING A MARKET LEADER IN ENTERPRISE KUBERNETES MANAGEMENT」で次のように説明されています。
Following regulatory approvals and the acquisition’s close, customers of both companies will benefit from a broader best-in-class portfolio as well as from the vastly increased global presence and innovation power. SUSE customers will benefit from the robust capabilities of Rancher’s industry leading cloud native technologies, named by Forrester WaveTM as a leader in Enterprise Container Platform Software. Rancher’s customers will on the other hand gain access to SUSE’s global support network and broad open source portfolio.
規制当局の承認を経て買収が完了した後、両社のお客様は、クラス最高のポートフォリオの拡大と、グローバルなプレゼンス、イノベーション向上などの恩恵を受けることになります。SUSEのお客様は、Forrester Waveで示された業界をリードするRancherのクラウドネイティブテクノロジーの堅牢な機能を利用することができ、Rancherのお客様は、SUSEのグローバルなサポートネットワークと幅広いオープンソースポートフォリオを利用することができます。
買収後もRancherはマルチベンダ対応を維持するとのこと。
Rancher LabsとSUSEそれぞれの理由を考える
Dockerの登場とそれを契機としたコンテナ市場の盛り上がりは、Docker社やRancher Labs社、Deis社など多くの新興企業を生み出しました。
そしてコンテナ市場が本格的に立ち上がり、マイクロソフトやIBM、VMware、Amazon Web Services、Googleなど大手企業がコンテナに本格的に取り組み始めると、Deis社はマイクロソフトに買収され、HeptioがVMwareに買収されたように、新興企業のいくつかは大手企業に買収されます。
買収されなかった(あるいは買収されることを選ばなかった)Docker社は自身でエンタープライズ市場への取り組みを本格化しましたが成功せず、エンタープライズ市場向けの製品をすべて他社へ売却。デベロッパー向けのツールベンダとして再出発しています。
そうした新興企業の中で引き続き独立した企業として一定の存在感を保っていたのがRancher Labsでした。
そして今後も同社が成長し続けていくためには、Docker社がチャレンジしたようにエンタープライズ市場で成功していくことが不可欠です。そのために、すでに一定の成功をエンタープライズ市場で収めているというSUSEと組むほうが得策だと判断したのでしょう。
一方でSUSEは、コンテナ市場向けの製品などをいくつかリリースしていますが、存在感を示すことはほとんどできていませんでした。同社にとって強力なコンテナ製品群を得るうえで、Rancher Labsの買収は有力な選択肢であったことは間違いないと思われます。
買収手続きは10月末までに完了する予定とされています。
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