QUICとHTTP/3がIETFのラストコール。RFCによる標準化が間近に
IETFのQUICワーキンググループで標準化作業が進められてきたQUICとHTTP/3が、6月のQUICワーキンググループにおけるラストコールを経て、IETFのステアリンググループであるIESGのラストコールとして10月21日に受諾されました。
ラストコールとしてIESGが受諾したドキュメントは、QUICとHTTP/3の標準化に関わる以下の6つのドキュメントです。
- QUIC: A UDP-Based Multiplexed and Secure Transport
- QUIC Loss Detection and Congestion Control
- Using TLS to Secure QUIC
- Version-Independent Properties of QUIC
- Hypertext Transfer Protocol Version 3 (HTTP/3)
- QPACK: Header Compression for HTTP/3
IESGは11月16日まで、これらのドキュメントに関わるコメントを受け付ける予定としています。
早ければ数週間以内にQUICとHTTP/3はRFCとなり、インターネットプロトコルの標準に加わる見通しです。
GoogleがQUICをIETFへ提唱
もともとQUICは、高速なHTTPの通信を実現するためにGoogleが2013年に発表し、同社のChromeブラウザやクラウドサービスに独自に実装したプロトコルでした。
そのGoogleが2015年にQUICを新たなインターネットプロトコルとしてIETFに提唱し、2016年にはIETFに「QUICワーキンググループ」が作られます。
これにより、QUICをインターネット標準にするための標準仕様の策定が本格的に動き始めました。
2018年には、QUICをトランスポート層とした新たなHTTPの名称を「HTTP/3」とすることが合意され、QUICワーキンググループにおいてQUICとHTTP/3の標準化作業が進められてきました(同時に、RFC後のHTTP/3のメンテナンスはHTTPワーキンググループが行うこととされました)。
参考:「HTTP/3」がHTTP-over-QUICの新名称に。IETFのQUICワーキンググループとHTTPワーキンググループで合意
QUICをトランスポート層に採用するHTTP/3
QUICは、従来のHTTPでトランスポート層に用いられているTCPの代わりに、UDPを用いています。
TCPはエラー訂正機能などを備え信頼性の高い通信が可能な一方、比較的オーバーヘッドの大きなプロトコルです。
そこでTCPの代わりに通信の信頼性は保証されないもののオーバーヘッドの小さいUDPを用い、独自に一定の信頼性を保つ実装を組み込みつつHTTPに適した効率的でレイテンシの小さな通信を行えるようにしたのがQUICです。
暗号化にはTLS 1.3を採用。
このQUICにHTTPを適用させたのが「HTTP/3」といえます。
HTTP/3は5年半ぶりのメジャーバージョンアップ
HTTPはWorld Wide Webを開発したティム・バーナーズ=リーによって1990年に最初のバージョンが作られました。
その後、1996年にHTTP/1.0がIETFによってRFC化され、1999年にHTTP/1.1へアップデート。2015年2月には初めてのメジャーバージョンアップとなるHTTP/2がRFCとなりました(ちなみにHTTP/2もGoogleが開発したSPDYがベースになっています)。
参考:HTTP/2、IETFの標準化プロセスが完了しRFCに。16年ぶりにHTTPがバージョンアップ
今回HTTP/3が登場すれば、約5年半ぶりのメジャーバージョンアップとなります。
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