マイクロソフト、新型コロナウイルスによる世界的なクラウド需要の急増に対し、万が一のときの優先順位を説明

2020年3月24日

グローバルにデータセンターを展開するクラウドは、災害に強いサービスであると考えられています。

地震や台風のような特定の地域を襲う災害に対して、災害の影響を受けていない地域のデータセンターのキャパシティを利用することで、可用性を確保することが容易であるためです。

日本でも2011年3月に発生した東日本大震災のときに、被災していない地域のデータセンターが活躍したことをご記憶の方も多いでしょう。

しかし現在発生している新型コロナウイルスによる影響は、世界各地に及んでいます。そのため、影響を受けていない地域のデータセンターが影響を受けている地域のクラウド需要を一時的にでも支える、という、従来の災害対策の構図がとりにくくなっています。

しかも、まだその影響が明確に表れてはいませんが、世界各国の工場の稼働停止や生産力の低下、物流量の低下は、クラウド需要の増加を支える世界中のデータセンターにおけるサーバやネットワーク、電力設備などの増設ペースを落とし、あるいは設備のメンテナンスなどに影響が出れば休止の事態にもつながりかねません。

そうした中で、在宅勤務などの要因で世界中でインターネットのトラフィックやクラウドサービスに対する需要が急増していると伝えられています

マイクロソフトが3月9日に公開した記事「新型コロナウイルスに対応するお客様に向けたマイクロソフトの支援」でも、感染が急速に広がった中国で、1月31日以降Microsoft Teamsでのミーティングや通話、テレカンファレンスがそれまでと比べて500%増加し、Microsoft Teamsの利用量そのものも200%増加したと説明しています。

もちろんマイクロソフトはこの需要増に対応する努力を懸命に行っています。そのうえで、3月21日に公開したMicrosoft Azure Blogの記事「Our commitment to customers and Microsoft cloud services continuity」で、万が一にもクラウドに対する需要増に追いつけなくなったときの優先順位について説明しています。

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ポイントを引用しましょう。

As demand continues to grow, if we are faced with any capacity constraints in any region during this time, we have established clear criteria for the priority of new cloud capacity. Top priority will be going to first responders, health and emergency management services, critical government infrastructure organizational use, and ensuring remote workers stay up and running with the core functionality of Teams. We will also consider adjusting free offers, as necessary, to ensure support of existing customers.

もしも今後も需要が拡大し続けてキャパシティの制約に達した場合、どの地域においても私たちは新たなキャパシティに対する優先順位を明確にしています。

最優先は第一緊急事態対応者である医療や緊急対策サービスであり、政府の重要な組織基盤による利用、そしてリモートワーカーがMicrosoft Teamsのコア機能を継続して利用できるようにもしていきます。さらに、既存のお客様に対する支援を確保するために、無料提供分についても必要に応じて調整を検討していきます。

万が一、世界中でコロナウイルスの影響などでクラウドへの需要が高まり、しかしクラウド側が設備や運用の問題でその需要に応えられなくなりそうになったとき、マイクロソフトはこの優先順位による利用者の選択を行うことになります。

もちろんそうした事態にならないことが最も望ましいのですが、静かに、しかしいまのところ着実に進行する世界的な災害のなかで、万が一の事態を想定し、そうなったときの行動をあらかじめ公表することは、公共インフラ的な存在になったクラウドサービスの事業者としての責任を果たそうとする姿勢のありかたの1つのように思えます。

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Junichi Niino(jniino)
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