新型コロナウイルスの影響でインターネットのトラフィックは国内でどれだけ増加しているか?
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが急速に広がりを見せるとともに、2月27日に政府から小中学校への休校が要請されたことで子供たちによる日中のインターネット利用の増加が予想されるなか、実際にインターネットのトラフィックは増加しているのか、増加しているとすればどのくらいなのでしょうか。
IIJはインターネット全体の利用が増えていると分析
IIJは3月13日付けで公開したIIJ Engineer Blogの記事「新型コロナウイルスのフレッツトラフィックへの影響」で、IIJのフレッツ対応サービス(光回線/ADSL)の状況を基にしたトラフィックの影響について報告しています。
その記事の中で「トラフィックは明らかに3月2日から傾向が変わりました。この日から全国の学校が臨時休校を開始し、それに伴って在宅で仕事をする人が急増しました」と、コロナウイルスによる影響でトラフィックが明らかに増加していると説明しています。
それを示すために記事の中でIIJの(IPv6 IPoEを含まない)フレッツトラフィック総量の推移を1週間ごとに重ねて示したグラフを紹介しています(ここではダウンロードトラフィックのグラフのみ引用します)。
このグラフを見ると、青と緑の線がおおむねほかの色の線を上回っていることが分かります。緑の線は、3月2日月曜日から3月8日日曜日までのトラフィックを示した線で、青の線は3月9日から13日金曜日のお昼(このIIJの記事が書かれた時間まででしょう)までのトラフィックを示しています。
ピンクと赤の線は、それ以前の2月17日から23日までと2月24日から3月1日までを示しているので、おおむね3月2日からトラフィックが増加していることが読み取れると思います。
では何のトラフィックが増加しているのか、IIJの記事では「Googleが1.16倍、Amazonが1.16倍、Appleが1.14倍、Netflixが1.17倍、Facebookが1.10倍となっています。つまり、人気コンテンツはほぼ同様に伸びていて、特定のサービスが突出して増えたのではなく、全体が増えています」と分析しており、「特定のサービスが増えたというより、平日昼間に在宅している人が増えてインターネット利用全体が増えたと言えそうです」と、電子会議など特定のアプリケーションによるトラフィック増ではなさそうなことも示されました。
NHK News Webが3月15日付けで配信した記事「ネット通信量が急増 テレワークや休校が背景か 新型ウイルス」では、NTTコミュニケーションズによるトラフィック分析の結果が示されています。
記事の一部を引用しましょう。
インターネットの接続サービスを提供するNTTコミュニケーションズは、平日の午前9時から午後6時までのインターネットの通信量を先月の第1週から、1週間ごとに分析しました。
その結果、いずれも先月の第1週と比べて、第3週までは大きな変化がなかったものの、第4週には、数%増えたということです。
そして、今月の第1週に入るとおよそ35%と大幅な増加になり、第2週も、およそ40%増えたということです。
こちらも今月に入ってトラフィックが明確に増えたことが説明されており、しかも35%増という大きなトラフィックの増加が示されています(このニュースソースをNTTコミュニケーションズのWebサイトで探したのですが、記事執筆時点で公開されていないようでした)。
インターネットエクスチェンジのトラフィックも3月から一段の増加
国内でインターネットサービスプロバイダ同士を接続する、インターネットエクスチェンジの状況がどうなっているかも、合わせてみてみましょう。
下記はJPIXが公開しているトラフィック状況を示したグラフの3月16日夜の時点のもので、上が首都圏、下が大阪です。月の区切りが分かりやすいように、オリジナルのグラフに、2020年1月末と2月末を示す灰色の縦線を2つ重ねる加工をしました。
もう1つ別のインターネットエクスチェンジとして、JPNAPが公開している東京と大阪のトラフィックを示すグラフも見てみましょう。
JPIXのグラフでは、東京も大阪も3月に入るタイミングで大幅にトラフィックが伸びているように見えます。一方、JPNAPでは一見、あまり増えていないようにも見えますが、明るい緑が示す「incoming avg」の変化は3月を境に明示的に増えているように見えないでしょうか。
9年前の大震災のときもインターネットは多くの人にとって大事なライフラインでした。その形は違いますが、再び大きな災難が多くの人に降りかかる中で、ネットのライフラインとしての重要性がさらに増していることは間違いありません。そうした中で今回のトラフィック増においても安定して通信ができるインフラを支えているインターネット通信事業者の方々への努力に敬意を表したいと思います。
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