NVIDIAはネットワークベンダへ向かう。Mellanoxに続きCumulus Networksの買収を発表
NVIDIAはネットワーク機器向けソフトウェアなどを提供するCumulus Networksの買収を発表しました。
We are absolutely thrilled to announce that Cumulus Networks is officially joining the @nvidia team! --> https://t.co/FN7h2y1eDd pic.twitter.com/8fECFMVcv4
— CumulusNetworks (@CumulusNetworks) May 4, 2020
同社はこの1週間前に高速ネットワーク機器の大手ベンダMellanoxの買収完了を発表したばかり。これでネットワーク機器のスイッチやNICのハードウェアに加えて後述するホワイトボックススイッチ向けのソフトウェアを手にすることになります。
NVIDIAは明らかに、データセンター向けの高速ネットワーク機器ベンダとして製品を充実させようとしています。
Cumulusはホワイトボックススイッチ用のOSを提供
Cumulus Networksは、ネットワーク機器のためのLinux OSであるCumulus Linuxなどのソフトウェアを提供するベンダです。
従来のネットワークスイッチは、ベンダ専用のハードウェアに専用のOSが搭載されるのが普通でした。しかしこれでは、スイッチに対して新しいプロトコルを導入やスイッチの管理のための追加機能などを行おうとすると、いちいちベンダに要望を出し、対応してもらう必要があります。
クラウドの登場による大規模データセンター市場の急速な成長は、クラウドベンダやデータセンター事業者がより高速で大規模なデータセンター内ネットワークを構成するニーズを高め、それがネットワークスイッチに対して、新しいプロトコルなどの処理ルールの追加や管理ツールとの連携などのカスタマイズを自分たちで行いたいというニーズへと結びついていきます。
そうした事情を背景に登場したのが、いわゆる「ホワイトボックススイッチ」です。
ホワイトボックススイッチとは、ネットワークスイッチのハードウェアをオープンなものにし、ユーザーがそこで自由にソフトウェアを載せることで、機能追加などを自由に行えるようにしたものです。
PCがさまざまなハードウェアベンダから登場しつつも同じオープンな仕様に基づいて作られているおかげで、ユーザーはLinuxやWindowsなど好きなOSをインストールし、その上でさまざまなアプリケーションを実行できるのと同じようなことを、ネットワーク機器でも実現しようというのがホワイトボックススイッチのコンセプトです。
参考:ホワイトボックススイッチとは何か? オープン化がすすむネットワーク機器のハードとソフトの動向(後編)。ホワイトボックススイッチユーザ会 第一回勉強会
そしてCumulus NetworksのCumulus Linuxは、このホワイトボックススイッチ用のLinux OSとして一定の存在感を持つOSです。また同社はNetQと呼ばれる統合的なネットワーク運用管理ツールも展開しています。
Cumulus Networksの買収を明らかにしたNVIDIAのブログ「Riding a Cloud: NVIDIA Acquires Network-Software Trailblazer Cumulus」では、MellanoxのチップにCumulusのソフトウェア、特にNetQを組み合わせることによるソリューションが示されています。
With Cumulus, NVIDIA can innovate and optimize across the entire networking stack from chips and systems to software including analytics like Cumulus NetQ, delivering great performance and value to customers.
Cumulusの買収によって、NVIDIAはチップからシステム、そしてCumulus NetQのようなソフトウェアまでネットワーキングスタック全体にわたり革新と最適化が可能になり、高い性能と価値をお客様に届けられるようになります。
NVIDIAのもっとも得意とする分野であるGPUによるハイパフォーマンスコンピューティングは、データセンターにおいて高速なGPUを高速なネットワークで束ねることによって実現します。
つまり同社の強みを今後も維持して行くために高速なネットワークの実現はクリティカルな要素であり、同社がMellanoxやCumulus Networksのようなネットワーク機器関連企業に注目し、買収を進めているのはそれを十分に意識しているためでしょう。
今後NVIDIAはGPUベンダとしてだけでなくネットワーク機器ベンダとしての側面も持つようになり、全体としてデータセンター向けのハイパフォーマンスコンピューティングのワンストップソリューションを提供できるベンダという位置づけを獲得することになるのではないでしょうか。
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