世界中でIT人材不足が深刻化。しかしイノベーションを推進できる人材は、そもそも従来のスキルマップには存在しないと、ガートナー
ガートナー ジャパンは、2020年以降に向けたIT人材戦略に関する展望を発表。企業は、従来の常識にとらわれない斬新なIT人材戦略を導入することが求められると指摘しています。
世界中でIT人材不足が深刻化
同社は、優秀なIT人材の獲得がデジタルビジネスの推進を成功に導く最大の要因の1つとして認識されている中で、世界中でIT人材不足が深刻化。世界中の経営者がこの難題に頭を悩ませていると指摘。
そしてこのIT人材不足を背景に、企業にとって人材管理は、ビジネス戦略の実現に向けて改善すべき組織コンピテンシの第一位になっていることを示しました。
従来のスキルマップ上には、イノベーション人材は存在しない
これまで多くの企業では、企業の将来に必要なスキルとそれを備えた人数を基に、人材調達や育成計画を行う「スキルベース」のIT人材戦略を推進してきました。しかし今後、デジタルビジネスイノベーションを推進していく上で、このやり方では人材育成上の大きな効果を期待できないと、ガートナーは説明します。
その理由として、イノベーションを推進できる人材のスキルは、そもそも従来のスキルマップには存在しないためだとして、今後はスキルベースのアプローチに代わって「プロファイルベース」の人材戦略に移行する動きが広がり、2025年までに、デジタルビジネスイノベーションを事業化段階まで到達させた企業の80%が、スキルベースからプロファイルベースの人材戦略に転換しているとガートナーは予測しています。
プロファイルベースのアプローチとは、プロジェクトや領域ごとに、チームに求められる人材の行動様式や働き方、ほかのメンバーや利害関係者との関係性、勤務場所、チームの特性や規模、ITスキルやビジネスのスキル、さらには価値観や意識などを、総合的に判断してIT人材像を特定するアプローチのこと。
日本のIT人材のうち5万人は国内に居ながら国境を越えて働く
さらにガートナーは、世界中でIT人材の獲得競争が激化する中、日本企業のCIOはさらに大胆な施策を打ち出さなければならなくなっているとも指摘します。
というのも、2025年には日本のIT人材のうち5万人が、デジタルプラットフォームを通じ、国境を越えて居住国外の企業で働く人々になると同社は予想しているためです。エンジニア、デザイナー、プログラマー、テスト担当者、データサイエンティストなどを含むこうした人たちは、国内に居ながらも従来のIT人材市場には現れない存在になるため、同社はこれを「隠れた人材」(インビジブルタレント)と呼んでいます。
そしてガートナーは、日本国内に既に約1万人の隠れた人材が存在し、今後5年以内にその数は5倍にまで増加すると予測しています。
同社ディスティングイッシュト バイスプレジデントでガートナー フェローの足立祐子氏は、こうした隠れた人材が登場する要因として「日本企業が、賃金の低さに加えて技術者への正当な理解と評価、ならびに技術者のニーズ(職場環境、テクノロジ導入、働き方)などの面での不満に対応できていない」ためだと述べています。
その上で、優秀な隠れた人材を採用するためには、「従来とは異なる働き方の提供を検討し、柔軟で伸縮性に富んだIT組織を設計した上で、隠れた人材に適した雇用形態を導入することも必要となるでしょう」としています。
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