Docker社が新戦略を明らかに。Docker Desktopの拡張によってコンテナ開発を容易に、Docker Hubを開発エコシステムの中核にすると
Docker社は2019年11月に、それまで注力していたエンタープライズ向けの製品群をすべてMirantis社へ売却し、以後はデベロッパー向けのツールに注力することを表明しました。
コンテナ型仮想化ソフトウェアであるDockerの成功により、同社は第二のVMwareになるべくエンタープライズ向けのコンテナオーケストレーション製品やコンテナレジストリソフトウェアなどを展開してきましたが、残念ながらエンタープライズ市場で大きな成功を収めることができず、この決断に至ったわけです。
ではデベロッパー向けツールへの注力とはどういうことなのか。仕切り直した同社の新戦略の一端が説明されました。
コンテナを用いた開発の複雑さを解決する
3月9日付けの同社のブログに、同社CEOのScott Johnston氏が投稿した記事「Helping Developers Simplify Apps, Toolchains, and Open Source」では、クラウドネイティブなアプリケーションを開発するデベロッパーが直面する複雑さを解消し、ビルドやデプロイなどを行う一連のツールチェーンの整備を容易にするとともに、これからもオープンソースを尊重していくことが表明されています。
In this post, #Docker CEO @scottcjohnston breaks down the complexities that many #developers face when it comes to #apps, #toolchains & #opensource https://t.co/8zIbT7kVLD
— Docker (@Docker) March 9, 2020
その翌日、3月10日付けのブログに同社製品担当バイスプレジデントのJustin Graham氏が投稿した記事「Helping You and Your Development Team Build and Ship Faster」では、同社の戦略がもう少し具体的に説明されています。
その1つ目としてDokcer Desktopを拡張し、コンテナを用いた開発への参加を容易にすること、開発チームのコラボレーションとコミュニケーションを改善することなどを挙げています。上記の記事からポイントを引用しましょう。
First, we will be expanding on the tooling and experiences in Docker Desktop to (a) accelerate the onboarding of new developers to development team processes and workflow, (b) help new developers onboard to developing with containers, and (c) provide features that help improve team collaboration and communication.
まず第一に、Docker Desktopのツールと体験を拡張することにより、(a)開発チームのプロセスとワークフローに対する新規開発者の参加を加速し、(b)コンテナを用いた開発への新規開発者の参加を支援し、(c)チームのコラボレーションとコミュニケーションを改善する機能を提供する。
そして2つ目はDocker Hubを開発ツールのエコシステムの中核に据えるということです。
we will make Docker Hub the central point for the ecosystem of tools to partner with us in delivering you a great experience. Docker Hub will provide a range of pipeline options from high abstraction/opinion options, to construct and stitch yourself.
私たちはDocker Hubをエコシステムの中核とし、パートナーと共に強力な体験を提供する。Docker Hubは高度かつ意識的な抽象化によるさまざまなオプションから利用者自身による細かな構築まで、幅広いパイプラインの選択肢を提供するようになる。
おそらく同社は、ソースコードの管理にコードリポジトリであるGitHubが欠かせないサービスとなったように、コンテナを用いた開発においてコンテナリポジトリであるDocker Hubを欠かせないサービスにしようとしているのではないかと思われます。
と同時に、コンテナを用いた開発ワークフローの普及と充実、そしてそれをより幅広い開発者に使ってもらうための入り口としてDocker Desktopを位置づけているのではないでしょうか。
今後少しずつ具体的な製品やエコシステムを構成するパートナーの発表が行われるはずです。どのような発表が行われるのか楽しみに待ちたいと思います。
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