AMD、FPGA大手のXilinx買収を正式発表。データセンター向けプロセッサ分野で圧倒的なインテルを本格的に追撃
米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は、FPGA最大手とされるザイリンクス(Xilinx)の買収を発表しました。この買収によりAMDはデータセンター向けプロセッサを強化していくと説明しています。
AMD and @XilinxInc announce an agreement for AMD to acquire Xilinx—expanding our rapidly growing data center business and creating the industry’s leading high performance computing company.
— AMD (@AMD) October 27, 2020
Xilinxは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と呼ばれるプロセッサを世界で初めて開発した企業であり、現在もこの分野で最大手とされているベンダです。
FPGAとは、チップ内部のロジックをソフトウェアによってあとから自由に書き換えられるLSIの一種。LSI内部にロジックを書き込んでしまえるため、ロジックの処理がハードウェアのスピードで実行されることになります。
そのため、一般に汎用プロセッサ上でソフトウェアを実行するよりもFPGAで処理する方が圧倒的に高速かつ低消費電力になるという利点があります。
汎用プロセッサの進化が鈍化し、GPUやFPGAへの注目度が高まってきた
これまでコンピュータの進化を支えてきたのは、x86プロセッサに代表される汎用プロセッサの急速な性能向上でした。汎用プロセッサとは、そのうえでソフトウェアを実行することによってほぼあらゆる処理を高速に実行できるように設計、製造されたプロセッサです。
しかしここ数年、プロセッサの回路の微細化に限界が見えてきたことを主な要因として、汎用プロセッサの性能向上は明確にペースが落ちてきました。
一方、ビッグデータや機械学習といった、これまで以上に大量のデータを高速に処理することが求められる新たな分野が台頭してきています。この大量データの処理は汎用プロセッサにはかなり荷の重い処理といえます。
そこで注目され始めたのが、GPUやFPGAといった、特定の処理であれば汎用プロセッサよりも圧倒的に高速に処理できる特定目的のために設計、製造されたプロセッサです。
CPUとGPUやFPGAを上手く組み合わせ、それぞれのプロセッサが得意な処理を担当することで、汎用プロセッサだけですべての処理を行うよりも高速かつ低消費電力を実現できるのです。
Xilinxの買収はAMDが本気でXeonに挑むことを示している
ビッグデータや機械学習などの処理が大規模に展開されるデータセンターにおいて、CPUとGPUやFPGAを組み合わせた処理の最適化は、今後間違いなく主流になります。
2015年にインテルがFPGAベンダのアルテラを買収したのは、これをインテルがデータセンター向けプロセッサであるXeonで実現するためでした。
今回、AMDがXilinxを買収する目的も、データセンター分野でXeonを追撃するためにはFPGAが欠かせないことが明白なためです。
つまりXilinxの買収は、圧倒的にインテルのXeonが強いデータセンター向けプロセッサ市場に、AMDが本気で挑むのだということを強く示しています。
そしておそらく、次に起きるのはFPGAをどうやって既存のソフトウェアエンジニアに活用してもらうか、という課題への取り組みでしょう。
いくらハードウェア的にFPGAが優れていたとしても、ソフトウェアエンジニアに活用されなければ意味がありません。一方で、FPGAのプログラミングは汎用プロセッサにおけるプログラミングよりも難しく、しかもベンダごとの違いが非常に大きいとされています。
インテルとAMDは、それぞれのFPGAを使ってもらえるように、データセンター向けの主要なソフトウェアベンダや開発ツールベンダに働きかけを強めていくことになるでしょう。
データセンター向けプロセッサは多様化していく
ちなみに、ビッグデータや機械学習などの分野の台頭を背景に急成長してきたGPUベンダのNVidiaも、汎用プロセッサベンダであるARMを買収しました。
これもインテルやAMDと目指すところは同じ、汎用プロセッサのARMとGPUを組み合わせ、データセンターに最適なプロセッサを実現することで自社のデータセンター向けビジネスを拡大しようという目論見です。
さらにクラウドベンダもデータセンター向けプロセッサ市場に参入しています。
Googleは機械学習の分野で自社開発のTPUを開発、提供しています。
またAWSもASICベンダを買収済みで、自社でARMベースのデータセンター向けプロセッサを開発していくことを明確にし、活用しはじめています。
- [速報]AWS、自身でプロセッサを開発していく姿勢を明らかに。独自開発の第二世代ARMプロセッサ「Graviton 2」発表。AWS re:Invent 2019
- AWS、独自開発したARMベースの「Graviton 2」プロセッサを、「Amazon ElastiCache」のデフォルトプロセッサに
マイクロソフトもAI処理に独自のFGPAを開発していることを発表しています。
このように、これからのデータセンター向けプロセッサはインテル、AMDという2大プロセッサベンダに加えて、NVidia/ARM、そしてクラウドベンダの自社開発プロセッサなど多様なプレイヤーが登場していきます。
そしてそれぞれが得意分野を持つプロセッサを展開する、多様化した市場になっていくものと見られます。
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