大企業の方がアジャイル開発を積極採用。ただし国内全体では依然としてウォーターフォールのほうが多い。ガートナー
調査会社のガートナーは、日本国内におけるアプリケーション開発手法に関する調査結果を発表しました(PDF)。
調査対象は従業員数20人以上の日本企業で、有効回答企業数は715。2018年4月から6月にかけて実施されたものです。
2000人以上の企業になるとアジャイルの採用率、採用予定が飛び抜けて増加
アジャイル開発に関して従業員数の規模別に調査した結果では、2000人以上の企業の約39%が「採用中」と答え最多。一方、1000人から1999人の規模の企業でアジャイル開発を「採用中」と答えたのが約21%。500人から999人でもほぼ同様です。
つまり2000人以上の従業員の企業ではアジャイル開発の採用率がそれ以下の規模の企業に比べて2倍近くあり、しかもグラフの緑色が示す「未採用:採用予定あり」というアジャイル開発に前向きな姿勢では、さらに突出して前向きなことが分かります。
ただし大企業でアジャイルが使われている理由として、大企業は業務領域が広く実施しているプロジェクトの数も多いことから、業務特性 (アプリケーション特性) に応じて、一部の領域にアジャイル型を採用するケースがあることも考えられます。
ガートナーはこの見方について、『「未採用:採用予定あり」の割合の高さも加味すると、環境の変化が激しいデジタル・ビジネスの時代にウォーターフォール型の手法のみでは対応が難しいという大企業の危機意識が表れているとも捉えられます 』と分析しています。
ウォーターフォールは普及しているが縮小傾向、アジャイルは拡大傾向
回答全体を開発手法ごとに分類した結果も見ていきましょう。
ウォーターフォールを「採用中」と答えたのは全体の43%。ただしそのうち15%は「採用中:縮小」と、縮小傾向にあり、「未採用:採用予定あり」は2%と、これからウォーターフォールを採用する企業はわずかにとどまっています。
一方、アジャイルは全体の17%が「採用中」と答え、そのなかで「採用中:縮小」はわずか2%。アジャイルを未採用ながらこれから採用する「未採用:採用予定あり」は13%となっており、今後も少しずつアジャイルの採用が広がっていくことが期待されます。
ガートナーは、ウォーターフォールとアジャイル、そして反復型の開発手法を次のように定義しています。
ウォーターフォール:従来の明確で固定された (とされる) 要件を扱う手法。シーケンシャルな作業分解図を使用してプロジェクトのコストを予測し、プロジェクトにかかる期間と必要なリソースを特定する。
アジャイル型:固定の期間とリソースを使用してデリバリーを計画する手法であり、その基盤となるのは (作業分解図の形を取る) 時系列ではなく、分解された機能である。
反復型:段階的ウォーターフォールを基に、各段階またはイテレーション (反復) の後にフィードバックを返す明示的な機会を追加する手法。これにより、要件の不備を早い段階で検出し、解決できるようになる。なお、日本では反復型とアジャイル型の定義の違いは若干曖昧である。
ガートナー ジャパンのアナリストでシニア ディレクターの片山治利氏はこれらの調査結果を踏まえて、次のように述べています(コメントを一部抜粋)。
「従来のアプローチを変えず、変化への対応を怠ることは、もはや許されない状況にあります。品質やコストの課題を早期に解決し、自社のビジネスに貢献するアプリケーションを開発/デリバリできる次元へと、IT部門は自らシフトしていく時期に来ています」
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