クラウドベンダなどによるサービス利用を制限したMongoDBの新ライセンス「SSPL」を理由にDebian、Fedora、RHELがMongoDBの配布取りやめを表明
MongoDBがAWSなど大手クラウドベンダによるサービス化に反発し、商用サービス化を制限する新ライセンスに変更したことは以前の記事で紹介しました。
参考:Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
新ライセンスはAGPLをベースにMongoDBが独自に作成したもので、「Server Side Public License」(以下、SSPL)と呼ばれています。
SSPLではサービス提供元もソースコード公開を義務化
SSPLでは、MongoDBをサービスとして提供する場合、サービス提供元が独自に変更した部分を含めてソースコードを無償で公開しなければならなくなりました。
以下がその旨を記したSSPL 13条の記述の一部です。
13. Offering the Program as a Service.
If you make the functionality of the Program or a modified version available to third parties as a service, you must make the Service Source Code available via network download to everyone at no charge, under the terms of this License.
13条 プログラムをサービスとして提供する場合
もしもこのプログラムもしくは変更したバージョンの機能をサードパーティに対してサービスとして提供する場合、このライセンスの条項の下で、そのサービスのソースコードをネットワーク経由で誰に対しても無償で提供しなければならない。
もしもSSPLに従ってソースコードを公開したくないのであれば、MongoDB社と別途、商用ライセンスを締結することになります。
つまり今後MongoDBをサービスとして提供するのであれば、SSPLの下でソースコードを公開しコミュニティに貢献するか、もしくは商用ライセンスの下で開発元であるMongoDBにお金を払うか、どちらかを選ぶことになるわけです。
オープンソースイニシアチブはSSPLについて議論中
MongoDBはこのSSPLがオープンソースライセンスに合致していることを確認するために、SSPLをオープンソースイニシアチブへ提出しています。
オープンソースイニシアチブとはオープンソースを促進することを目的とする組織であり、オープンソースを定義する「The Open Source Definition」を公開すると共に、あるライセンスがオープンソースであるかどうかのレビューも行います。
SSPLはさまざまな議論を呼び起こしているとされていますがまだ議論の過程にあり、オープンソースライセンスに該当するかどうかは未決だと2018年12月のオープンソースイニシアチブのブログで報告されています。
どのような議論が行われているかは「December 2018 License-Review List Summary」でその概要を読むことができます。
Debian、Fedora、RHELはSSPLのソフトウェアを排除へ
オープンソースイニシアチブでの議論が継続している一方、主要なLinuxディストリビューションのいくつかはすでにSSPLを理由にMongoDBの配布を取りやめる方針を表明しています。
Debian
2018年12月5日、Debian プロジェクトリーダーFTP AssistantのChris Lamb氏はSSPLがDebianの精神に合致しないとメーリングリストへ次のように投稿し、MongoDBのバンドルアーカイブへの収録の取りやめを表明しました。
However, the SSPL is clearly not in the sprit of the DFSG, yet alone complimentary to the Debian's goals of promoting software or user freedom.
In light of this, the Project does not consider that software licensed under the SSPL to be suitable for inclusion in the Debian archive.
SSPLはあきらかにDFSG(訳注:Debian Free Software Guidelineのこと)の精神に合致しないし、(訳注:yet aloneに続く次の訳は自信なし)Debianの目指すソフトウェアの推進やユーザーの自由への賛意もない。
これに照らし、当プロジェクトはSSPLのライセンスを採用したソフトウェアはDebianアーカイブに含まれるものであるとは考えない。
Fedora
2019年1月15日には、Fedoraの法務担当であるTom Callaway氏もSSPLのソフトウェアはFree Software Licenseではないとの判断を表明。
After review, Fedora has determined that the Server Side Public License v1 (SSPL) is not a Free Software License.
そしてSSPLのソフトウェアはFedoraには含まれないだろうと明らかにしています。
We have updated our "Bad License" list to include SSPLv1. No software under that license may be included in Fedora (including EPEL and COPRs).
Red Hat Enterprise Linux
現在βテスト中のRed Hat Enterprise Linux 8でも、SSPLを理由としてMongoDBがバンドルされないことがリリースノートに記されています。
Note that the NoSQL MongoDB database server is not included in RHEL 8.0 Beta because it uses the Server Side Public License (SSPL).
SSPLを理由に主要ディストリビューションでの配布が取りやめになることでMongoDBに何らかの影響があるのか、そして議論中のオープンソースイニシアチブはSSPLをオープンソースライセンスであると判断するのかどうか。SSPLの登場はさまざまな波紋を呼んでいるようです。
1月28日10:30 追記)DebianのChris Lamb氏の発言はアーカイブへの収録についてであるとの指摘を受け、表現を変更しました。Fedoraについても原文の「included」に合わせて表現を一部変更し、それらにあわせてタイトルも一部変更しました。
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