複数のKubernetesクラスタへアプリをまとめてデプロイ、ローリングアップデートなどの新機能を搭載した「Rancher 2.2」が登場
コンテナ管理ツールの「Rancher」を開発するRancher Labsは、複数のKubernetesクラスタをまとめて管理する新機能を搭載した「Rancher 2.2」を発表しました。
RancherはもともとKubnernetesのようなコンテナオーケストレーション機能を備えた、分散環境対応のコンテナ管理ツールでした。独自のコンテナオーケストレーション機能である「Cattle」を搭載し、Kubernetesと機能的に競合する部分がありましたが、昨年リリースされたRancher 2.0からはコンテナオーケストレーション機能としてKubernetesに対応しました。
現在ではKubernetesのデプロイや運用を含む分散環境における総合的なコンテナ運用管理ツールとして開発が進められています。
そしてRancher 2.2ではより高度なKubernetesのクラスタ管理機能として、同一のアプリケーションを展開する複数のKubernetesクラスタをまとめて管理できる新機能が搭載されます。
カタログから選択したアプリを複数クラスタへデプロイ
分散アプリケーションで高い可用性を実現しようとするとき、複数のアベイラビリティゾーンにまたがって分散アプリケーションを展開、運用する方法が有力な選択肢となります。万が一あるアベイラビリティゾーンが障害で停止したとしても別のアベイラビリティゾーンが稼働していれば、アプリケーション全体としては稼働が継続できるためです。
しかしこの構成ではアベイラビリティゾーンの障害には対応できますが、万が一ソフトウェア上の問題でKubernetesのクラスタがまるごと落ちてしまうことには対処できません。
これに対処するには、同一のアプリケーションを、複数のアベイラビリティゾーンごとにそれぞれ異なったKubernetesクラスタとして展開、運用する必要があります。しかしこの場合、単一のアプリケーションを運用するのに複数のクラスタの運用を伴うことになるため、複数のアベイラビリティゾーンにまたがったひとつのクラスタを運用管理するのに比べると手間がかかります。
あるいは、いわゆるエッジでのKubernetesの運用、例えば地理的に分散した支店などでそれぞれのKubernetesクラスタを展開し、そこでアプリケーションを運用する場合も、多数のKubernetes上でそれぞれ同一のアプリケーションを運用するケースが発生するでしょう。
このように今後Kubernetes環境が普及するにつれ、同一アプリケーションを多数のクラスタで運用することになるケースが増えてくることが想定されます。
Rancher 2.2では、この同一アプリケーションを複数のクラスタに展開、運用する機能が新しく追加されました。
Rancherの機能として備わっているアプリケーションのカタログから、デプロイしたいアプリケーションを選び、デプロイ先のクラスタを選択していくことで、アプリケーションをいくつものクラスタに対してまとめてデプロイが可能。
さらにローリングアップデート機能も備えており、設定した時間ずつずらしながら、複数のクラスタのアプリケーションを順繰りにアップデートすることも可能です。
現在Rancherは「Rancher 2.2 Preview 2」としてプレビュー公開されています。
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