IBMがPOWERプロセッサの命令セットをオープンに。OpenPOWER Foundationへ寄贈
IBMは同社が開発したPOWERプロセッサの命令セット(POWER Instruction Set Architecture:ISA)をOpenPOWER Foundaionへ寄贈し、誰でも無償で利用できるオープンな仕様にすることを発表しました(IBMの発表。OpenPOWER Foundationの発表)
POWER ISAだけでなく、プロセッサとメモリのあいだのデータ転送を効率的に行うための仕様であるOpen Coherent Accelerator Processor Interface(OpenCAPI)およびOpen Memory Interface(OMI)もあわせてオープンになりました。
"We're taking the POWER ISA, licensing it to the #OpenPOWER Foundation so anyone can implement on top of it - royalty free, and with patent rights." - Ken King, General Manager, OpenPOWER Alliance, @IBMPowerSystems #OpenPOWERSummit pic.twitter.com/UVesUArTir
— OpenPOWER Foundation (@OpenPOWERorg) August 20, 2019
OpenPOWER Foundationは、Google、IBM、NVIDIA、Mellanox、Tyanらが2013年に設立した団体。POWERプロセッサとそのエコシステムの発展と普及を目指してきました。
参考: Google、IBM、NVIDIAなどがデータセンター向けのサーバ、ストレージ、ネットワークの開発協力へ、POWERをベースに
今回のPOWER ISAのオープン化と同時に、OpenPOWER FoundationはLinux Foundationと連係していくこともあわせて発表されました。
用途ごとに多様なプロセッサが活躍する時代へ
POWER ISAがオープンになったとしても、急にそのエコシステムが拡大し普及に拍車がかかる、ということは期待しにくいでしょう。
また、オープンなプロセッサの命令セットは、すでにRISC-V(リスクファイブ)やMIPS Openなどが存在します。
- オープンなCPUの命令セットを開発する「RISC-V Foundation」がLinux Foundationと提携。「RISC-V」の推進を後押し
- 「MIPS Open」発表。MIPSの命令セットがオープンソースとして公開へ
こうしたなかでPOWER ISAのオープン化の背景には、今後のプロセッサが多様化すると見られていることがあるのではないでしょうか。
いまはサーバのプロセッサといえばインテルアーキテクチャが主流となっていますが、汎用プロセッサとしてのインテルアーキテクチャの性能向上のペースはかなり落ちてきています。
しかし今後もビッグデータや機械学習、IoTのような低消費電力など、さまざまな用途においてさらに強力なコンピューティングパワーが求められていることは明らかです。
こうしたニーズに応えていくためには、GPUやFPGAを含む用途ごとに最適化され高い能力を発揮できる多様なアーキテクチャのプロセッサが混在して使われていくものと考えられます。
POWER ISAのオープン化はそうしたなかで一定の存在感を保ちつつエコシステムを発展させていくための戦略ではないかと考えられます。
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