[速報]Google、大手クラウドに不満を表明していたMongoDB、RedisらOSSベンダと戦略的提携。Google CloudにOSSベンダのマネージドサービスを統合。Google Cloud Next '19
Googleはサンフランシスコでイベント「Google Cloud Next '19」を開催。4月9日(日本時間4月10日未明)に行ったオープニングキーノートで、MongoDB、Redis、Confluent、Elasticをはじめとするオープンソースソフトウェアベンダとの戦略的提携を発表しました。
提携相手はConfluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsの7社。
この提携の下で、Googleはオープンソースソフトウェアベンダが提供するマネージドサービスをGoogle Cloudに統合。ユーザーはGoogle Cloudの管理コンソールからオープンソースソフトウェアベンダのマネージドサービスを導入、管理でき、課金、サポート窓口もGoogle Cloudに一本化されます。
Google Cloudのコンソールからサービスを導入可能。
稼働状況の把握もできます。
「私たちはこれらパートナーをサポートし、(Googleの)テクノロジーを用いることで成功をパートナーと共有していく。新しい形のオープンソースコミュニティを育て、その発展をより確実なものとし、成長するための受け皿を作っていく」(Google Cloud CEOのThomas Kurian氏)
大手クラウドベンダに不満を表明し始めていたOSSベンダ
この提携の背後にあったのは、昨年に表面化した、オープンソースソフトウェアの開発元からクラウドベンダへの不満でした。これによりクラウドベンダによるオープンソースの商用利用を制限する動きが相次ぎました。
Redisの開発元「Redis Labs」は、2018年8月に同社が開発したRedis拡張モジュールに関するライセンスの変更を発表。2018年10月にはMongoDBの開発元もライセンスを変更。いずれも商用サービスでの利用に制限がかかりました。
12月にはKafkaの開発元であるConfluentも一部のコンポーネントのライセンスを変更し、商用サービスでの利用を制限しました。
これらはいずれも、大手クラウドベンダがオープンソースを使ったマネージドサービスを提供していることに開発元が反発したためです。
MongoDB社の共同創業者兼CTOのEliot Horowitz氏は次のようにブログに書いています。
オープンソースプロジェクトにとってサービスで得られる収入は、大事な資金源となり得ます。しかし現実は、あるオープンソースプロジェクトが人気になると、コミュニティにはまったく、あるいはほんの少しだけしか貢献していない大規模クラウドベンダがあっさりとその大部分を獲得していくのです。
例えばAWSはMongoDB互換のサービス「Amazon DocumentDB」など、オープンソースを用いたさまざまなサービスを提供しています。
Googleも例外ではなく、例えばGoogle CloudではRedisをベースにしたマネージドサービス「Cloud Memorystore」などを提供しています。
こうした状況については下記の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。
- Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
- AWSが、Elasticsearchのコードにはプロプライエタリが混在しているとして、OSSだけで構成される「Open Distro for Elasticsearch」を作成し公開
反発するOSSベンダへのGoogleからの回答がこの戦略的提携
今回のGoogleによるOSSベンダとの戦略的提携は、こうした反発に対するGoogleとしての回答だといえます。Google Cloud CEOのThomas Kurian氏はオープニングキーノートで次のように語っています。
「このところオープンソースコミュニティは、クラウドプロバイダーが彼らと協力せず、オープンソースによるマネタイズを行おうとしているのだ、と見なしています。
私たちGoogleとしては、この状況は顧客にも、デベロッパーコミュニティにも、ソフトウェアのイノベーションにもよくないと確信します。
そこで私たちは主要なオープンソース企業と提携し、新しいやり方でオープンソースをデベロッパーコミュニティやカスタマーへ提供することにしたのです」
提携発表時には、この提携に参加する6つのベンダのCEOが動画で登場。
さらにステージにはRedis Labs CEO Ofer Bengal氏が登場し、次のようにコメントしました。
「この戦略的な取り組みは私たちにとって素晴らしいものです。ご存じの通りオープンソースのマネタイジングはオープンソースベンダにとって大きな課題であり、とりわけこのクラウド時代にはそうです。そうした中で、オープンソースに取り組んできたクラウドベンダであるGoogleの新しい取り組みは、オープンソースコミュニティにとってビッグニュースだと思います」
Bengal氏は、Redisのマネージドサービスの競合であるGoogle CloudのMemorystoreについても、顧客に選択肢を提供できるものとして歓迎するコメントをしています。
「あるユースケースではGoogle CloudのネイティブサービスであるMemorystoreが向いているし、より洗練された、アクティブ-アクティブ構成やマルチデータモデルを利用する場合にはRedis Enterpriseが向いているでしょう」
この提携によってGoogleは、大手クラウドに反発していた主要OSSベンダを見事に(そして分かる範囲では不満を表明したすべてのベンダを)パートナーへと変えていったように見えます。果たして、AWSやMicrosoft Azureなどほかの大手クラウドはこれからどう動くでしょうか。
Google Cloud Next '19
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商用サービスを制限するライセンス変更の流れ
オープンソースとして開発されてきたソフトウェアが、クラウドなどによる商用サービスを制限するライセンスへの変更は、2019年以後いくつも行われてきました。下記はそれらを紹介した記事です。この項目は随時更新します。
- Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
- [速報]Google、大手クラウドに不満を表明していたMongoDB、RedisらOSSベンダと戦略的提携。Google CloudにOSSベンダのマネージドサービスを統合。Google Cloud Next '19
- オープンソースのCockroachDBも大手クラウドに反発してライセンスを変更、商用サービスでの利用を制限。ただし3年後にオープンソースに戻る期限付き
- AWSをElasticが名指しで非難。ElasticsearchとKibanaのライセンスを、AWSが勝手にマネージドサービスで提供できないように変更へ
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- Redis、クラウドベンダなどによる商用サービスを制限するライセンス変更を発表。今後はRedis社とのライセンス契約が必須に
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