「Envoy Mobile」登場。モバイルアプリケーションにもプロキシによる可観測性、多様なネットワーク機能、トラフィック管理などを提供
アプリケーションに対してプロキシとして動作する「Envoy」は、多数のサービスが相互に通信を行うことでアプリケーションを構成する、いわゆるマイクロサービスを実現するうえで重要なモジュールとして急速に注目度が高まっています。
多数のサービスが相互に通信を行う場合、サービスごとに個々に通信機能を作り込むよりも、通信部分は共通したプロキシにまかせることで、サービスごとに通信を作り込まずに済むため実装が安定しやすく、またサービス間の暗号化通信やロードバランシング、プロトコル変更などの要求にもこたえやすく、柔軟なネットワーク構成に対応でき、プロキシを集中管理することで通信ログも容易に取得できて問題の切り分けが容易になるなど、プロキシの利用には多くのメリットがあるためです。
そのプロキシの代表的なソフトウェアの1つであるEnvoyは、Uberのようなライドシェアサービスを提供するLyftによって開発されました。現在はKubernetesなどをはじめとするマイクロサービス向けのさまざまなソフトウェア開発をホストするCloud Native Computing Foundationの下でオープンソースとして開発が進められています。
そのEnvoyをモバイル対応にした「Envoy Mobile」プレビュー版を、Lyftが発表しました。
Envoy Mobileとはどのようなものなのか、Webサイトから引用しましょう。
Envoy Mobile brings the power and consistency of Envoy Proxy to the iOS and Android platforms, providing a ubiquitous API and abstraction for mobile application networking. Running Envoy on the phone, at the edge, and within the datacenter provides unparalleled networking functionality and observability to modern distributed applications.
Envoy Mobileは、多様なAPIとモバイルアプリケーションネットワークの抽象化によって、Enboy Proxyがもたらすパワーと一貫性をiOSとAndroidにもたらします。Envoyを、スマートフォンで、エッジで、データセンター内で利用することで、モダンな分散アプリケーションに比類なきネットワーク機能と可観測性を与えます。
すなわち、いちいちアプリケーションとして通信用のコードを書かなくても、柔軟で強力なネットワーク機能やログの収集と言った機能が得られるというマイクロサービスに対して与えていたプロキシのメリットが、モバイルアプリケーションでも得られるようになる、というわけです。
具体的には、可観測性機能としてメトリクス、ログ、分散トレース、APIグルーピングなどを実現。プロトコルの対応としては、QUIC/HTTP3, TLS 1.3, gRPCストリーミング、オフラインや遅延APIコール、キャッシュなどへの対応。トラフィック管理としてリトライやタイムアウト管理、回線断、さまざまなサービスディスカバリへのルーティング、ポリシーマネジメントなどの実現など、多数の機能を提供もしくは予定しているとしています。
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