Docker社、WSL 2に最適化した「Docker Desktop for WSL 2」来月リリース。Windows 10でLinux版Dockerを実現、Kubernetesも1クリックでセットアップ

2019年6月18日

Docker社は、WSL 2に最適化した「Docker Desktop for WSL 2」テクニカルプレビューを来月公開する予定であることを明らかにしました

WSL 2は、Windows 10上でLinux環境を実現する「Windows Subsystem for Linux(WSL)」の次期版。Windows 10に専用のLinuxカーネルを組み込み、専用の軽量な仮想マシン内で実行することでフルLinux互換環境をWindows 10内部に作り出し、現在のWSLの互換度では実現できなかったDockerやFUSE(Filesystem in Userspace)などに対応します。

このWSL 2を搭載した初めての早期プレビュー版「Windows Insider Preview build 18917(20H1)」が公開されたばかりです。

このWSL 2でのDocker対応を受けてDocker社がリリースを発表したのが、Windows上でDocker環境を構築するツールとして同社が提供している「Docker Desktop」の次期版「Docker Desktop for WSL 2」です。

機能面は変わらず、Kubernetesの1クリックセットアップも

現在のDocker Desktopは、WSLがDockerに対応していないため、仮想化ハイパーバイザであるHyper-Vを利用し、仮想マシンのなかでDocker環境を構築し、Windowsから利用できるようにしていました。

これがDockerに対応したWSL 2の登場により、Hyper-Vの代わりにWSL 2を用いてDocker環境をWindows上で構築するようにしたことが「Docker Desktop for WSL 2」の最大の特徴です。Hyper-Vを利用しなくてよいため、Windows 10 Homeでも利用可能になります。

fig Docker Desktop for WSL 2のアーキテクチャ

機能面では現在のDocker Desktopと変わらず、自動アップデート、トランスペアレントHTTPプロキシ構成、Windowsからdaemonへのアクセス、Windowsファイルシステムへのマウント、そしてKubernetesの1クリックセットアップなどが提供されます。

新機能:Linux Workspaces

さらに新機能として「Linux Workspaces」が提供されます。これはDocker Desktopと同じLinux環境内でLinuxのさまざまなプログラムが実行できる機能です。

現在のDocker Desktopで利用しているHyper-V仮想マシンによるDocker環境では、コンテナ内でしかLinuxプログラムを動かすことはできないという制限がありましたが、WSL 2を用いたDocker Desktop for WSL 2のLinux Workspacesでは、Docker Desktopと同じLinux環境内でさまざまなLinuxプログラムを実行可能になります。

これによってさまざまなツールをコンテナと連係して実行できるようになるため、コンテナを用いた一連の開発ツールチェーンがすべてLinux環境内で完結できるようになります。

このLinux Workspacesを、Visual Studio Codeで利用可能になったリモートのLinuxやWSLに対して接続して操作できる新機能「Remote Development」を組み合わせると、Windows上のVisual Studio Codeから同一マシン内のLinux環境でコンテナを用いた開発がシンプルで容易に実現できると紹介されています。

参考:Visual Studio Code 1.35安定版リリース。リモート開発を可能にする「Remote Development」拡張機能が利用可能に

WSL 2を利用することで現在のDocker Desktopよりも大幅にI/O性能を向上できるため、I/O処理の負荷の高いNode.jsやPHPアプリケーションなどWebアプリケーションの性能向上が見込めます。また、Windowsファイルへのアクセスには現在のSambaの利用が不要になるため、より安定した動作が期待されます。

Docker Desktop for WSL 2のテクニカルプレビュー版は来月、2019年7月に公開予定。現在のDocker Desktopと同一マシン内で共存が可能とのことです。

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