オープンソースのCockroachDBも大手クラウドに反発してライセンスを変更、商用サービスでの利用を制限。ただし3年後にオープンソースに戻る期限付き
大手クラウドベンダがオープンソースのソフトウェアを利用して自社のクラウドサービスを充実させていることにRedisやMongoDBなどいくつかのオープンソースベンダが反発し、ライセンスを変更してクラウドによる商用サービスを制限する方向へ向かっていることは、以前に紹介しました。
そして、これに同調するオープンソースソフトウェアがまた1つ増えました。CockroachDBを開発しているCockroach Labsです。
同社が開発するCockroachDBは、GoogleのSpannerに触発されて開発が始まったオープンソースソフトウェアで、広域に分散したノードによって構成される分散データベースを実現するというもの。
どこか一部に障害が発生しても継続して稼働し、しかもスケーラブルな性能を実現できて、強い一貫性を実現するトランザクション処理とSQLをサポートするなどの特徴を備えています。
広域に分散したノードで構成されることにより非常に強い耐障害性を備えていることが、その名前の由来にも鳴っているわけです。
クラウドベンダによるサービス化という現実に対応
その開発元であるCockroach Labsは、CockroachDBのライセンスを変更し、商用サービスとして提供することを制限することを同社のブログにポストした記事「Why We’re Relicensing CockroachDB」で明らかにしました。
その理由はほかのオープンソースベンダと同様に、クラウドベンダがオープンソースを用いて都合よく儲けている現実に対応するためとしています。下記は前述のブログからの引用です。
We’re witnessing the rise of highly-integrated providers take advantage of their unique position to offer “as-a-service” versions of OSS products, and offer a superior user experience as a consequence of their integrations.
私たちはまさに、高度に統合されたプロバイダがその独自の立場を活かしてOSS製品のサービス版を提供し、その統合の結果として優れたユーザー体験を提供する、ということが台頭するのをまさに目にしているところなのです。
3年の期限付きで商用サービスでの利用を制限
その対策としてCockroach Labsが採用したライセンスが、MariaDBで使われている「Business Source License 1.1」です。
同社はこれを多少アレンジし、ユーザーは自分で使うためであればCockroachDBのノードを好きなだけ増やすことができますが、商用サービスとしてCockroachDBを利用するには同社の許可が必要になる、という条件としました。
そしてもう1つ同社が設定したのが、この「Business Source License 1.1」の有効期間を3年間にしたことです。つまり3年たつとCockroachDBは自動的に元のApache License 2に戻るようになっています。
具体的には次のようになります。まず、今年10月にリリース予定のCockroachDB 19.2が初めての「Business Source License 1.1」適用対象となります。
CockroachDB 19.2はリリースされた時点から「Business Source License 1.1」が適用され、リリースから3年後の2022年10月にApache License 2となります。2020年4月にリリース予定の CockroachDB 20.1はリリース時点で同様にBusiness Source License 1.1が適用され、3年後の2023年4月にApache License 2になるわけです。
つまり最新バージョンはつねにBusiness Source License 1.1としてリリースされ、3年後にApache License 2になる、というサイクルを繰り返していくことになります。
Even though the BSL isn’t an open source license, this compromise felt closest to the spirit of open source, while still protecting our business.
BSLはオープンソースライセンスではありませんが、この妥協案はオープンソースの精神に寄り添いつつ、当社のビジネスを保護するものにもなっていると考えています。
同社がこう書くように、期限付きのBusiness Source License 1.1採用はいい落としどころではないかと思うのですがどうでしょうか。
商用サービスを制限するライセンス変更の流れ
オープンソースとして開発されてきたソフトウェアが、クラウドなどによる商用サービスを制限するライセンスへの変更は、2019年以後いくつも行われてきました。下記はそれらを紹介した記事です。この項目は随時更新します。
- Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
- [速報]Google、大手クラウドに不満を表明していたMongoDB、RedisらOSSベンダと戦略的提携。Google CloudにOSSベンダのマネージドサービスを統合。Google Cloud Next '19
- オープンソースのCockroachDBも大手クラウドに反発してライセンスを変更、商用サービスでの利用を制限。ただし3年後にオープンソースに戻る期限付き
- AWSをElasticが名指しで非難。ElasticsearchとKibanaのライセンスを、AWSが勝手にマネージドサービスで提供できないように変更へ
- HashiCorp、全製品のライセンスを商用利用に制限があるBSLライセンスに変更すると発表
- Redis、クラウドベンダなどによる商用サービスを制限するライセンス変更を発表。今後はRedis社とのライセンス契約が必須に
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