オンプレミス版AWSの「AWS Outposts」、24インチ幅の専用ラックはキャスター付き、故障には部品交換で対応
Amazon Web Services(AWS)は6月20日、同社がオンプレミス向けに開発している「AWS Outposts」のハードウェア概要をYouTubeで明らかにしました。
AWS Outpostsは、AWSのクラウドインフラと同等のシステムをオンプレミスに持ち込み、パブリッククラウドと連係したハイブリッドクラウドを実現できるというもの。同社がクラウドの構築で培ってきた技術を基に、ハードウェアとソフトウェアが設計、開発されています。
AWS OutpostsはAWSのマネージドサービスで提供されるため、ユーザーは日常的なマシンの運用管理は不要。ユーザーはAWSの自分専用の新リージョンとしてAWSのコンソールからAWS Outpostsに対してプロビジョニングなどの操作とサービスの利用が可能です。
今回、この動画によって初めて一般にAWS Outpostsの外観とハードウェアの概要が公開されることになります。動画からその内容を紹介しましょう。
ラックの幅は24インチ
AWS Outpostsはラックにシステム一式が搭載され、顧客に提供されます。
ラックのサイズは幅24インチ(約61センチ)、奥行き48インチ(約122センチ)、高さは80インチ(約203センチ)。
一般にデータセンターでよく使われているのは19インチ幅のラックですから、それよりも幅広いラックになります。
ラックにはキャスターが付いていて、その場で自由に回転させたり移動させることができます。
AWS OutpostsはAWSのインフラを基に設計、開発されています。ということは、AWSのデータセンター内で使われているラックも同様に24インチ幅でキャスターが付いていて、いちいち人間がラックの裏へ回り込むのではなくラックを回転させてバックプレーンを確認したり、表側で配線をしたりしているのかもしれません。
故障にはコンポーネント交換で対応
AWS Outpostsの1つ目の特徴は電源です。通常のサーバラックではサーバごとに電源が搭載されていますが、AWS Outpostsではラック上部に冗長化された電源があり、ここからバックプレーンを通じて各サーバなどへ電力が供給されるため、各サーバは電源装置を持ちません。
この仕組みは高信頼性と低コスト、電力効率、サービスの向上などに役立つとのこと。
ラックにはネットワークスイッチも搭載。4つのトップ・オブ・ラック・スイッチごとに100GbEポートを利用可能。
これらを含めてAWS Outpostsのラックに搭載されているすべてのコンポーネントは冗長化されており、稼働に影響を与えずに交換可能。
そのため、AWS Outpostsで故障が発生すると、それが検知された段階で自動的になにをどう交換すべきかがユーザーに通知されます。ユーザーはその通知に従ってコンポーネントを外し、AWSへ故障したもの送り、代わりに送られてきたコンポーネントをラックに組み込むと、あとは自動的に再構成が行われます。
AWSと同じくNitro Systemを搭載
AWS OutpostsにもNitro Systemが搭載されます。
Nitro Systemは、AWSの基本的な機能であるAmazon EC2を実現するためのサブシステムです。KVMベースの軽量なハイパーバイザであるNitro Hypervisor、ネットワークやストレージの処理を行うNitro Card、そしてサーバのファームウェアやイメージの整合性チェックなどを含むNitroセキュリティチップなどから構成されています。
サブシステムとしてNitro Systemがあることで、ホストマシンの能力のほとんどすべてを仮想マシンへ振り向けることができるため高性能な仮想サーバを実現できます。さらにホストマシンからセキュリティ機能がオフロードされていることによる高い堅牢性なども実現されます。
AWS Outpostsのサーバには、AWSのクラウドデータセンターで使われているサーバと同様にNitro Systemが搭載されているうえに、AWS OutpostsがAWSのリージョンとのネットワーク接続のセキュリティに用いるための追加のNitro Systemも搭載されています。
AWS Outpostsは、2018年11月にラスベガスで行われたイベントAWS re:Invent 2018で発表されました。AWSネイティブ版とVMware Cloud on AWS版の2種類が提供される予定です。
今年中には正式提供が開始されると見られますが、まだ日程は発表されていません。しかし今回の動画公開により、その提供が近づいていることは間違いないようです。
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