Western Digital、オープンな命令セットの「RISC-V」で、自社製品ほぼすべての組み込み用プロセッサを置き換えていくと表明
大手ストレージベンダであるWestern Digitalは、これまで日立グローバルストレージテクノロジーズやサンディスクなどを買収してきたことでHDD、SSDを含めた幅広いストレージ関連製品を展開しています。同社によるとこうした製品に組み込まれるプロセッサコアは年間10億個を超えるとのことです。
同社はこうしたストレージ製品などに組み込まれるコントローラなどのプロセッサとして、独自仕様のプロセッサやARMプロセッサなどを用いてきました。
しかし同社は今後、オープンな命令セットの「RISC-V」(リスクファイブ)アーキテクチャを採用し、既存の組み込み用プロセッサを順次置き換えていくことを、6月21日に都内で開かれた記者発表会で説明しました。
オープンソースでライセンスされる「RISC-V」の命令セット
RISC-Vはカリフォルニア大学バークレイ校のコンピュータサイエンス科が開始したプロジェクトです。創立メンバーにはRISCプロセッサの基礎を築いた計算機科学者のデイビッド・パターソン博士らがおり、当初は教育に使うための命令セットとして作成されました。
しかし現在ではRISV-V Foundationの下で、完全にオープンで自由に使える商業用プロセッサの命令セットアーキテクチャを開発しています。命令セットはBSDオープンソースでライセンスされます。
現在RISC-V FoundationにはGoogle、NVIDIA、Qualcomm、Samsung、IBM、Micron、Mellanoxなどを含む100社以上の企業が参加しています。
Western Digitalの最高技術責任者 マーティン・フィンク氏は、同社がRISC-Vプロセッサを採用する理由として、大量のデータを処理するニーズやリアルタイムにデータを処理するニーズに特化したプロセッサを構築できるため、汎用プロセッサでは困難な領域をカバーできると説明しました。
「過去30年にわたり使われてきた汎用プロセッサがなくなるわけではない。RISC-Vによる目的特化型プロセッサは、汎用プロセッサを置き換えるのではなく、汎用プロセッサでできる範囲を超えていけるのだ、ということを強調したい」(マーティン・フィンクCTO)
また、特定の目的にプロセッサの機能をフォーカスさせることは、それ以外の余計な回路を省くことにつながるため、消費電力の面でも省電力化が進められる利点があるとのこと。
同社としてはこうした目的別プロセッサを製品に組み込んでいくことによって、より高性能で付加価値の高い製品を実現するとし、プロセッサの外販や知的財産の提供といったことをビジネスにする予定はないとしました。
「私たちはプロセッサのビジネスを展開しようとしているわけではない。今後もプロセッサを作ることや販売していくといったことはしない。いまの製品の機能を差別化していくことで(RISC-Vのプロセッサを)マネタイズしていく」(マーティン・フィンクCTO)
RISC-Vを採用した最初の製品は来年、2019年に登場する予定で、全体でRISC-Vへの移行が終了するのは5年から7年程度かかる見通しとのこと。
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