デルが正式に再上場へ、VMwareのトラッキングストックとの交換で。VMwareは独立を維持
2013年に経営陣が全株式を買い取るMBO(マネジメントバイアウト)を実行し非公開化を果たしたDell Technologies(以下デル)が、再上場することを正式に表明しました。
これは、ニューヨーク証券取引所で公開されているVMwareの業績に連動する株式である「Class Vトラッキングストック」(シンボル:DVMT)とデルの一般株式との交換などを行うことで、結果的にデルが上場することになる、という仕組みを利用した再上場です。
トラッキングストックはあくまで業績に連動する株式であり、企業の所有権を備えた一般株式とは異なるため、VMwareの独立性はこれまでと変わるところはありません。今回のデルの発表でもVMwareの独立性は維持されるとあらためて表明されています。
交換後の株式は、デルの業績に連動するものとなります。
トラッキングストックを選んだのは、再上場を急いでいたため
デルは再上場を目指していることを今年の2月に正式に認めていました。
デルが再上場する手段としてはおもに3つの選択肢がありました。1つ目は、正攻法としてデルの株式を証券取引所で上場する手段。2つ目は、公開企業である子会社のVMwareにデルが買収される、いわゆる逆さ合併による上場。そして3つ目が、今回のようなトラッキングストックとデルの株式との交換です。
マイケル・デル氏はCNBCテレビのインタビューのなかで3番目の選択肢を選んだ理由として、先に複雑な手順を踏むか、それとも複雑な手順を後回しにするかで、後回しにする方を選んだ、という主旨の返答をしています。つまり正攻法で証券取引所に上場を申し込んだり、逆さ合併をするよりも、先に上場できる手段を選んだというわけです。
2月の時点で再上場を検討していたデルとしては、できるだけ早期に再上場を実現したかったのでしょう。
なぜデルは再上場を選んだのか?
デルはなぜ再上場を選んだのでしょうか? マイケル・デル氏は前述のCNBCテレビのインタビューで「資本構成をシンプルにしたかった」と答えています。
これは2月の記事「VMwareがデルを買収する可能性、CNBCやBloombergなどが報じる。デルは資金調達のため再上場を目指していると」でも書いたことですが、2016年にVMwareの親会社であり、大手ストレージベンダでもあるEMCを買収することで、エンタープライズ市場において大きな存在感を持つ総合ベンダとなったデルですが、その代償としてMBOにかかった費用やEMCの買収にかかった費用が借金として残っていると報じられていました。
そうした借金を抱えながらこの変化の激しい時代を乗り切るのは容易ではなく、それゆえに再び何らかの方法で株式公開を行い、新たに発行する株式などによって株式市場から資金を得ることで借金を軽減し、あらたな投資に活かしていこうというのが、デルが再上場を検討している理由だと考えられます。
いま、デルが戦っているエンタープライズ市場はAWSやマイクロソフト、Googleなどの突出した規模の企業が、その規模を活かした巨額の投資によってさらに成長を加速しようとしている、規模の経済が有効とされる市場です。
再上場はそうしたハイパージャイアントとの競争へ参加するために必要だと、デルの経営陣が判断したのではないでしょう。それもできるだけ早期に。その、わずか5年で過去の大きな判断をひっくり返して再上場を実現する、大胆な判断と実行力は評価に値すると思います。
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