VMwareがデルを買収する可能性、CNBCやBloombergなどが報じる。デルは資金調達のため再上場を目指していると
Dell Technologies(以下デル)が再上場を目指しており、選択肢として上場企業であるVMwareがデルを買収することも検討されていると、米CNBCやBloombergなどが報道しています。
(追記 2018/2/5 デルが検討中であることを正式に認めました。「デルの再上場もしくはVMwareとの合併、デルが正式に検討中と認める。米証券取引委員会へ提出した書類で」)
- VMware could buy Dell - CNBC
- VMware Plunges on Report It May Acquire Dell in Reverse Merger - Bloomberg
実は先週、この予兆ともいえるニュースが流れていました。
1月25日付のThe Wall Street Journalは関係者からの情報として、デルが戦略的転換を実現する上で必要な資金を調達するために再上場を検討していると報じました。
その翌日、1月26日付でBloombergも同様に関係者からの情報としてデルが再上場を検討していると報道。このBloombergの報道では、デルが3つの選択肢を検討しているとされていました。
1つ目はデル本体が再上場する選択肢、2つ目はデルが8割の株式を所有するVMwareの株式の残りの2割も買い取り100%子会社にするという選択肢(ただしこれの意図するところは不明)、3つ目はVMwareからスピンアウトしたPivotalの株式を売却するという選択肢です。
そして今週1月30日付けで、新たな選択肢としてVMwareがデルを買収する、いわゆる逆さ合併によるデルの再上場が検討されている、という報道がCNBCとBloombergから相次いで登場したのです。
なぜVMwareがデルを買収することが検討されているのか?
なぜVMwareがデルを買収する、という選択肢が登場したのでしょうか。
その背景として、デルが2016年に買収したEMCの子会社であるVMwareがなぜいまも独立した上場企業なのか、そしてなぜデルは現時点で上場していない非公開企業なのか、この2つを知っておく必要があります。
マイケル・デル氏が1984年に創業したDell Inc.はPCメーカーとして急速に成長し、1988年に上場企業となります。1990年代以降はPCだけでなくサーバやストレージなどエンタープライズ市場へも参入しました。
しかしこの数年、PC市場の成長は頭打ちとなってきており、デルもその影響を受けてPC事業が低迷し始めます。そこでデルは、株主などの意向を気にせず事業再編を大胆に進めるため、株式の非公開化を決断。
2013年に、経営陣が全株式を買い取るMBO(マネジメントバイアウト)を実行し非公開化を実現しました。
2016年にはストレージ最大手でありVMwareの親会社でもあるEMCを8兆円で買収。買収後はDell Technologiesとそのグループ全体で、サーバ、ストレージ、PCなどのハードウェアから、仮想化、クラウドオーケストレーション、アプリケーションプラットフォーム、そして全体のセキュリティまで、モダンなエンタープライズITの領域すべてをカバーする総合ベンダとなりました。
一方、デルがVMwareの親会社であるEMCを買収したことで、仮想化ソフトウェアベンダとしてのVMwareの中立性について懸念の声があがりました。
VMwareは今後、デル以外のサーバベンダ、例えばHPEやLenovoなどに対して不利な扱いをするのではないか? という懸念です。VMwareはすでに上場企業であり、中立性が失われることで業績に影響が出るのではないかと株主が心配するのは当然のことといえます。
そこでデルはその懸念を払拭するため、親会社のEMCがデルに買収されたあともVMwareは独立した上場企業として存続し、その中立性を尊重することを約束したのです。
デルによるEMC買収後の現在もVMwareが独立した上場企業として運営されてきたのには、こうした事情がありました。
VMwareによる逆さ合併などはまだ検討の初期段階
EMCを買収することで、エンタープライズ市場において大きな存在感を持つ総合ベンダとなったデルですが、その代償としてMBOにかかった費用やEMCの買収にかかった費用が借金として残っていると報じられています。
そうした借金を抱えながらこの変化の激しい時代を乗り切るのは容易ではなく、それゆえに再び何らかの方法で株式公開を行い、新たに発行する株式などによって株式市場から資金を得ることで借金を軽減し、あらたな投資に活かしていこうというのが、デルが再上場を検討している理由だとされています。
ということはVMwareがデルを買収してVMware傘下にデルが入るということに特段の意味はなく、単に上場のテクニックとして逆さ合併が検討されていると見るのが順当でしょう。
そして、その再上場を行うかどうかの議論はまだ初期段階だとのこと。下記はCNBCの報道から。
Dell's board of directors will meet next month to consider a slew of options, many of which are still in the early stages of examination, including the reverse merger.
デルの取締役会は来月会合を開き、まだ審査の初期段階にある逆さ合併を含む多くの選択肢を検討する予定である。
実際に何らかの結論が出るとしても、それは来月もしくはそれ以降のようです。
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デルはVMwareとの合併を検討していることを正式に認めました。
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