仮想化ストレージベンダのティントリ、存続の瀬戸際に
仮想化専用ストレージベンダの米ティントリ(Tintri)は現在、企業として存続できるかどうかの瀬戸際にあるようです。
同社のオフィシャルな発表を時系列で見ていきましょう。
同社が2018年6月15日付けで公開したプレスリリース「Tintri Reports Preliminary First Quarter Fiscal 2019 Financial Results and Provides Liquidity and Business Update | Tintri」では、同社がすでに資金的に破綻しつつあることを次のように認めています。
以下に一部を引用します。
The company is currently in breach of certain covenants under its credit facilities and likely does not have sufficient liquidity to continue its operations beyond June 30, 2018.
弊社は現在、与信限度枠に関するある契約に違反している状態にあり、2018年6月30日以後に事業を継続できるだけの十分な資金流動性を持てないかもしれない。
The company continues to evaluate its strategic options, including a sale of the company.
弊社は自社の売却を含む選択肢を検討しているところだ。
その3日後の6月18日、3月に就任したばかりのCEO Thomas Barton氏が辞任しました。後任は発表されていないため、現時点でCEOは空席とみられます。またBarton氏は暫定CFOも務めていましたが、これも後任はなくCFOも空席とみられます。
6月22日、ティントリ製品の製造を委託されているFlextronics Telecom Systemsからティントリに対して、支払いが滞っていることが指摘されます。
そして6月27日、ティントリは資金が早期に枯渇することを防ぐことなどを理由に、約200名の人員削減を発表しました。残る人員は40人から50人程度の見通しです。
1年前にNASDAQ上場したばかり
ティントリは2007年に創業。仮想化環境に特化したストレージというユニークな製品で成長し、1年前の2017年6月29日にNASDAQに上場しました。日本には2012年にティントリジャパンを設立しています。
3月にCEOに就任し、6月に辞任したBarton氏はサーバベンダのRackable Systemsの創業などを経験した人物で、Tintri再起に向けた起用と見られていました。しかし、6月15日のプレスリリースにあるように資金繰りに問題が発生したことで、自身の役割は終わったと考えたのではないかと思われます。
「2018年6月30日以後に事業を継続できるだけの十分な資金流動性を持てないかもしれない」と発表した同社ですが、7月になった現時点でも存続し、株式は市場で売買されています。しかし、株価はほぼゼロに近づいており、悲観的な見方が広がっているようです。
おそらくこの状態で最善の選択肢は、どこかに買収されたうえで既存顧客に対するサポートなどが継続されることだと考えられます。そのために同社は人員削減など規模を縮小することで資金の流出を極力抑えて時間を稼ぎつつ、買収先などを探しているはずです。
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ティントリは結局この一週間後に破産申請を行い、その後ストレージベンダのDDNに買収されることになりました。
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