「HTTP/3」がHTTP-over-QUICの新名称に。IETFのQUICワーキンググループとHTTPワーキンググループで合意
現在IETFで仕様策定が進められている、UDPをベースに効率的で高速な通信を実現するためのプロトコル「QUIC」をトラスポート層に用いる新しいHTTPの名称が「HTTP/3」になることが決まりました。
HTTP/3のベースはGoogleが開発したQUIC。IETFで標準化へ
もともとQUICは、Googleが高速なHTTPの通信を実現するためのプロトコルとして2013年に発表し、同社のChromeブラウザやクラウドサービスなどに実装してきました。
QUICは、従来のHTTPでトランスポート層に用いられているTCPの代わりに、UDPを用いています。
TCPはエラー訂正機能などを備え信頼性の高い通信が可能な一方、比較的オーバーヘッドの大きなプロトコルです。そこでTCPの代わりに通信の信頼性は保証されないもののオーバーヘッドの小さいUDPを用い、独自に一定の信頼性を保つ実装を組み込みつつHTTPに適した効率的でレイテンシの小さな通信を行えるようにしたのがQUICです。
Googleは2015年にIETFにQUICを新たなインターネットプロトコルとして提唱。2016年にはIETFがQUICをインターネット標準にするため「QUICワーキンググループ」を作り、標準仕様の策定が開始されました。
QUICはトランスポート層とHTTP層に分かれている
IETFが仕様策定中のQUICは、HTTPが利用するトランスポート層としてのQUIC(QUIC-the-transport-protocol)と、QUICをトランスポート層とする新HTTP(QUIC-the-HTTP-binding)に分かれています。
トランスポート層としてのQUICはHTTP以外にも利用されることも想定しています。
そしてQUICをトランスポート層とする新HTTPは、HTTP/2をベースとしつつも現在のHTTP/2とは異なるQUIC版HTTPとなります。
このQUIC版HTTPは、これまで「HTTP over QUIC」あるいは「HTTP/QUIC」などと呼ばれてきましたが、新名称として「HTTP/3」を用いるのはどうだろうか、という提案がQUICワーキンググループの中で出てきたのです。
ちなみにトランスポート層としてのQUICの名称はQUICのままです。
新名称「HTTP/3」として各ワーキンググループが合意
IETFは、11月3日から11月9日までタイのバンコクで「IETF 103 Bangkok」を開催。さまざまなワーキンググループがミーティングを行いました。
ここでQUICワーキンググループは11月6日にHTTP/QUICの名称について議論し、新名称を「HTTP/3」とするコンセンサスを得ます。
これを受けてHTTPワーキンググループも11月8日に議論を行い、同グループも「HTTP/3」という名称を用いることでコンセンサスが得られました。
これで、QUICをトランスポートに用いる新しいHTTPの名称が「HTTP/3」になることが事実上決まったことになります。
また、QUICワーキンググループによって仕様策定が行われた後のHTTP/3のメンテナンスは、HTTPワーキンググループが行うこともあわせてHTTPワーキンググループ内のコンセンサスがとれました。
HTTP/3とQUICの仕様完成と普及はこれから
IETFによるQUICおよびHTTP/3の仕様策定はまだ完了しておらず、普及もこれからです。
しかし、Google版のQUICはすでにGoogleのサービスとChromeに実装され利用されています。おそらくIETFによる標準化後のQUICとHTTP/3もGoogleは積極的に実装すると思われるため、HTTP/3が普及する可能性は高いのではないかと期待させられます。
参考
2021年5月、QUICがRFC 9000としてインターネット標準となりました。
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