インテル、DRAMと同じDDR4スロットに挿せる不揮発性メモリ「Intel Optane DC persistent memory」サンプル出荷開始、2019年に本格出荷へ
現代のコンピュータの基本的なアーキテクチャにおける記憶装置は、電源を切ると消えてしまう一時記憶装置(メインメモリ)と、電源を切っても消えない二次記憶装置(ストレージ)の2つを基本としています。
しかしインテルはこれまでにない新たな記憶装置(不揮発性メモリ)として、「Intel Optane DC persistent memory」(以下Optane DC)のサンプル出荷を開始したと発表しました。下記はそのプレスリリースの一節です。
One that we believe fundamentally breaks through some of the constricting methods for using data that have governed computing for more than 50 years.
これは、過去50年以上にわたってデータを利用するコンピュータの構造を規定してきた厳格な方法論を、根本的に打ち破るものだと私たちは信じています。
Optane DCはメインメモリと同様にDDR4スロットに挿して利用でき、1モジュールの最大容量が512GB。そして電源が切れても内容を失わない不揮発性のメモリとなっています。
インテルによると、Optane DCのサンプル出荷は5月30日から開始され、今年後半には特定の顧客向けに販売を開始、2019年には本格出荷を開始するとのこと。
プライベートプレビューの申し込みも開始されています。
Optane DCはDRAMより安価、NAND型フラッシュよりも高速
一般に、メインメモリとして使われているDRAMのアクセス速度は、数十ナノ秒から数百ナノ秒程度。そしてストレージのなかでも高速なフラッシュストレージに使われているNAND型フラッシュメモリのアクセス速度は、数十マイクロ秒から数百マイクロ秒だと言われており、その差は約は約1000倍です。
今回インテルが発表したOptane DCに使われている不揮発性メモリ媒体「3D XPoint」のアクセス速度は、ちょうどこのDRAMとNAND型フラッシュメモリのあいだ、1マイクロ秒から10マイクロ秒程度だと言われています。
そして容量あたりのコストも同様に、3D XPointはDRAMよりも安価ですがNAND型フラッシュよりも高価です(現時点ではNAND型フラッシュの10倍程度と言われており、量産による今後の価格低下が期待されています)。
この3DX PointをDDR4のメモリモジュールとして構成したのが「Optane DC」です。
つまりOptane DCは、DRAMのメインメモリよりも安価で大容量メモリを実現しつつ、NAND型フラッシュのストレージよりも桁違いに高速にアクセスが可能で、しかも不揮発性のため大容量データをメモリ上に保持し続けられるという特長を備えています。
これにより、例えばコンピュータの起動時に必要な情報をストレージから読み込む必要がなく最初からメモリ上に保存されているため(あるいはOptane DCから高速にDRAMへ転送され)瞬時にコンピュータが起動したり、データベースのトランザクションごとにいちいちログをストレージに書き込む必要がなくなって超高速なデータベースが可能になったり、などのコンピュータのさらなる性能向上が期待できます。
アプリケーションから不揮発性メモリをどう利用するか
昨年、Optane DCの原型となる「Intel persistent memory」が発表されたときには、新型Xeonプロセッサ、コード名「Cascade Lake」にあわせて登場するとされていました。おそらくこの路線は維持されると予想されるため、来年のOptane DCの本格展開はCascade Lake Xeon搭載のサーバとの組み合わせで行われるのではないでしょうか。
また、今回のサンプル出荷と今年後半に予定されている特定顧客向けの提供は、不揮発性メモリというこれまで事実上市場に存在しなかった(とはいえ数年前から他ベンダによるDIMM対応の不揮発性メモリは登場していましたが)ハードウェアを活用するために必要なソフトウェアの開発をサードパーティなどに行ってもらおうという意図があると考えられます。
現時点でアプリケーションから不揮発性メモリを活用する一般的な方法として、従来から存在するソフトウェアのテクニックであるメモリマップトファイルを利用するようです。
つまり、アプリケーションからアクセスする対象を不揮発性メモリ上にマッピングすることでアプリケーションからの超高速な読み込みや書き込みを可能にすると同時に、データは不揮発性メモリ上にあるためOSはいちいちその内容をストレージに書き戻す必要もなく、しかもDRAMよりも安価で大容量を期待できるため、大規模なファイルのマッピングにも適している、というわけです。
インテルとしては、こうしたOptane DCの特長を活かして性能向上を実現するアプリケーションを年内にある程度揃えておき、来年の本格出荷時にはOptane DCのメリットをできるだけ多くのユーザーが得られる状態を作り出したい、そう考えていることでしょう。
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