AWS、AMDのプロセッサを採用し、既存のインスタンスより10%安い新インスタンス「M5a」「R5a」を発表。インテルが独占してきた状況を変えられるか?
事実上インテルが独占しているクラウドデータセンターのプロセッサ市場に、AMDが風穴を開けようとしています。
Amazon Web Services(AWS)は、AMDのサーバプロセッサである「AMD EPYC 7000シリーズ」を採用した新インスタンス「M5a」「R5a」を発表しました。
AMDは主にデスクトップPCやノートPC向けに「RYZEN」ブランドのプロセッサを、サーバ向けや組み込み向けには「EPYC」ブランドのプロセッサを展開しています。
つまりAMD EPYCプロセッサはインテルXeonプロセッサの競合ブランドと言えます。
今回AWSに採用された「AMD EPYC 7000シリーズ」は1CPU当たり2.5GHzの最大32コア(64スレッド)、最大2TBのDDR4メモリ、128レーンのPCIeなどを備えたサーバ向けプロセッサです。
同社のAMD EPYC 7000シリーズのWebページでは、次のようにXeonを意識した紹介がされています。
柔軟性。性能。セキュリティー。クラウドから生まれたAMD EPYC SoC(System-on-a-chip)では、競合製品に比べてメモリー帯域幅が122%、I/O処理が60%、データセンター・アプリケーションを稼働するコアが45%多くなっています。ベア・メタル、仮想化、クラウドのいずれで導入する場合も、AMD EPYCプロセッサーにより、高速かつ応答性と安全性に優れたITが実現されます。
AWSが今回発表した「M5a」インスタンスは汎用目的のインスタンスで、「R5a」はメモリに最適化されたインスタンスです。
そしてそれぞれのインスタンス名の末尾の「a」がAMDプロセッサによるインスタンスであることを示しています。
AMDプロセッサを利用したインスタンス最大の特徴は、既存のインスタンスと比較して10%安くなっていることです。
インテルプロセッサを利用した既存の「M5」インスタンスと今回発表されたAMDプロセッサを利用した「M5a」インスタンス、そして同じくインテルプロセッサを利用した既存の「R5」インスタンスと今回発表された「R5a」インスタンスでは、どちらもAMDプロセッサを利用したインスタンスの方が10%安価になっています。
顧客にとって、AMDプロセッサを採用したインスタンスの方が魅力的に見えるのです。
インテルが独占している市場にAMDは状況を開けられるか?
AWSをはじめとする大手クラウドがAMDプロセッサをこれまで採用してこなかったのは、インテルのプロセッサに対抗できるほどのサーバプロセッサがAMDから登場していないことが大きな理由でした(過去にはMicrosoft AzureがAMDのプロセッサを採用していたことなど、まったく採用がなかったわけではありませんが)。
しかしここへきてAMDの最新サーバプロセッサには十分な競争力があることが、AWSによる採用とその値付けによって示されつつあります。今後それらが実際に顧客に利用されることで、それが実績によって裏付けられていくことでしょう。
またAWSだけでなくオラクルもOracle CloudでAMDプロセッサの採用を発表しています。今後さらにほかのクラウドベンダがAMDプロセッサを発表しても不思議ではないでしょう。
AMDは今月行ったイベント「AMD NEXT HORIZON」で、インテルに先んじて最新の7nmプロセス技術を採用した製造を次世代プロセッサで開始すると発表し、今後もインテルに対して競争力のあるプロセッサを提供し続けることを強調。さらに攻勢を強める姿勢を明らかにしています。
果たしてAMDはインテルがほぼ独占してきたサーバプロセッサ市場の状況を変えられるでしょうか。そしてインテルはこのAMDの攻勢に対してどのような反撃を加えるつもりでしょうか。無風だったサーバプロセッサ市場がにわかに騒がしくなってきました。
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