ブログでメシが食えるか? Publickeyの2018年[たぶん最終回]

2018年12月25日

PublickeyはおもにエンタープライズITの分野にフォーカスし、クラウドやシステム開発、Webテクノロジーなどを中心に専門性の高い記事を提供しているブログメディアです。

運営は基本的に僕一人で行っていて、日々記事を書くことに加えて、Webサイトを構築するためのHTMLを書き、お客様や代理店からの問い合わせに対応し、バナー広告やタイアップ広告を販売し、アドサーバへの設定や運用をし、掲載後のお客様への報告などを行っています。

こうして運営されているPublickeyの売り上げはどうだったのか、今年も紹介していきましょう。

広告は直接販売が中心。アフィリエイトは重視せず

Publickeyの特長は、AdSenseやアフィリエイト広告に依存せず、バナー広告やタイアップ広告を直接販売して売り上げを上げていることです。専門性の高いブログメディアでは必然的に読者数が絞られることになるため、クリック数に売り上げが連動するAdSenseやアフィリエイト広告では十分な売り上げがあがらないためです。

一方で、メディアの専門性が読者と広告主にきちんと評価されれば、広告の価格をある程度高い水準に保てます。現在、Publickeyではバナーを1カ月30万円、タイアップ広告も1本30万円で販売しています。いずれも税別です。詳しい広告の内容や値段は媒体資料をご覧ください。

ちなみに、お客様とのあいだに広告代理店がはいった場合、売り上げの15%がマージンとしての代理店の取り分となることが一般的です。Publickeyの場合、売り上げの9割以上は広告代理店さま経由での販売ですので、設定した価格での30万円がまるまるPublickeyの売り上げになるケースは多くありません。

2018年のページビューとインプレッション

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売り上げ報告の前に、2018年のページビューを報告しましょう。

Publickeyでは2017年9月から2018年8月までの1年間、SEOの専門家にアドバイスをいただきつつSEOの強化施策をいくつか行ってきました。その成果かどうかは分かりませんが、9月に行われたGoogle検索のアップデート以降は検索流入が2割前後増加するようになりました。

このおかげで、毎月お客様に目安として提示しているバナーのインプレッション数である月間35万インプレッションの達成は以前より容易になってきました。ただ一方で、Google Analyticsで見ているページビューの値と、アドサーバで見ているバナー広告のインプレッション数の乖離が以前より大きくなってきている懸念も抱えています。

これはどういうことかというと、読者によってたくさんページを見てもらえるようになったのに、バナー表示回数はそれと同じほど増えてはいないということです。

一般に、ページが表示された回数を示すページビューよりも、バナーが表示された回数を示すインプレッション数の方がやや少なくなります。例えばWebブラウザのJavaScriptをオンにしていないためにバナーが表示されなかったり、バナーが表示される前にページを閉じてしまうなどの原因によって、こうしたことは起こり得ます。

Publickeyの場合、以前はこの差が10%以内に収まっていました。しかし、ここ数カ月はこの差が10%を超えて15%近くになってきています。もしかしたらアドブロックなどの普及がこの値を大きくしているのかもしれません。

これが進行して、いくらページビューを増やしてもバナーのインプレッション数が増えない、といったことが起こらないでほしいと思っています。

2018年の売り上げ報告

では売り上げの報告に行きましょう。

2018年1月から12月までの1年間、Publickeyの売上は合計で1450万9281円でした。内訳はバナーが745万3728円(記事ライセンス費も含む)、タイアップ記事が683万6400円、AdSenseやAmazonアソシエイトなどが21万9153円です。

この場を借りて、年間を通じて広告をご出稿いただいたグレープシティ様、アドバンスソフトウェア様をはじめ、日本IBM様、CData様、Google様、産業技術大学院大学様、grasys様、日本マイクロソフト様、日本オラクル様、ウイングアーク1st様、エクセルソフト様、クラスメソッド様、サーバーワークス様、Dell EMC様、東京エレクトロンデバイス様、フェンリル様、データドック様、AWS様、エクイニクス・ジャパン様ほか、Publickeyの広告を扱っていただいた代理店様など多くのお客様にお礼を申し上げます(順不同)。

そしてなにより、今年もPublickeyをご愛読いただいた読者の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

2018年のPublickeyのビジネス環境

2018年はここ数年続いてきた、おもにクラウドベンダを中心とした積極的なバナーの出稿が一段落した年になったと感じています。

2018年がはじまった時点で、Publickeyのバナーを何カ月も先まで予約したいという打診が複数ありました。今年も順調な年になるな、と思ったものです。実際、2018年夏までは昨年同様にほぼバナー広告は売り切れていました。

ところが9月頃に風向きが変わります。キャンセルが発生し、バナー広告に空き枠が目立つようになってきたのです。

今年の売り上げが昨年より下がったのはこれが要因です。昨年は年間を通じてほぼバナーは売り切れていましたが、今年は9月以降に空き枠がでてしまいました。昨年のPublickeyの売り上げと今年の売上の内訳を比較していただくと、バナー広告の売上の下落がほぼそのまま年間売り上げの下落につながっていることが分かると思います。

ただ実際のところ、バナーが年間を通じてほぼ売り切れていた昨年、一昨年が出来過ぎであり、このくらいの空き枠がでるほうが一般的に見て通常の状態なのです。

もしも僕が企業の経営陣であれば、売り上げが下がってしまってどうしよう、とか、来年はどうやって売り上げを増やそう、といったことに間違いなく悩まされることになるのでしょう。でもまあ、今の僕はそういう立場ではないので、これだけの売り上げがあればオーケーでしょ、今年もよくやったよ。という感じです:-)

ちなみに、個人事業主としてはPublickeyの売り上げのほかに、講演やパネルディスカッションのモデレータや原稿執筆といったフリーランスとしての収入もあります。

ブログでメシが食えるか?

Publickeyの売り上げを年末に報告するようになって、今回で8回目です。おかげさまで今年も、ブログでメシが十分に食えたと言ってよいのではないかと思います。

さて、タイトルに[たぶん最終回]と書いたように、Publickeyの売り上げ報告は今年で最後にしようかと思っています。毎年この記事を楽しみにしていただいている読者の方には残念なお知らせになってしまい、申し訳ありません。

もともとこの年間連載「ブログでメシが食えるか」を2011年に始めたとき、Publickeyの運営はまだ3年に満たず、その年の売り上げは479万円でした。そしてこの先このブログメディアを運営していって本当にメシが食える状態が続けられるのか、それを赤裸々に見てもらおうと思って始めたわけです。

最初にタイトルを決めるとき「ブログでメシが食えるか? Publickeyの2011年」と西暦を入れたのは、数字がいいときだけ報告するのではなくて、売り上げが良くても悪くても、毎年ちゃんと報告する年間連載にしよう、という気持ちがあったためです。別に僕は読者をサロンとか情報商材へ勧誘をするために自分をよく見せる、などという必要もないですしね。

もちろん2011年の時点で、僕はPublickeyで食っていけるのかどうか、まだ自信がありませんでした。当時、正直にこう書いています。

「とりあえず今年は食えたようだ」と答えたうえで、「でも継続可能かどうかはまだ自信がない」と付け加えたいと思います。

でもだからこそ、たぶんこれまで誰もやったことのない方法によって個人が運営するメディアの実態を見てもらうことに意義があるんじゃないかと思ってもいました。そしてもしかしたら何年もPublickeyが失敗し続ける姿を涙目で報告し続ける可能性だってあったわけです。

しかし幸いなことに翌年Publickeyの売り上げは835万になり、3年後には924万、4年後には一千万円を超え、その後もずっと一千万を超えてきたのは、この年間連載を楽しみにしていただいている読者にはご存じのところです。

こうやって何年も順調な売り上げが続いたので、僕もすっかり自信を付けた、というわけではないのですが、それでも個人がメディアを立ち上げて、それがうまくいくのか? いかないのか? 食えるようになるのかならないのか? という、いちばん面白い時期はそろそろ終わったのではないかと思います。

また、毎年売り上げをこうやって報告することは僕にとってプレッシャーでもあり、「うーん、売り上げが悪かったらかっこ悪いなあ……」という思いを日々抱えながら仕事をしていました。

もちろんそれは覚悟した上で始めたことではありますが、前述のようにこの年間連載にとって面白くて大事な時期をそろそろ終えのではないかと考える現在、そのプレッシャーから解放されて、もう少しリラックスして仕事をしたいなあとも思っています。

ただ、この年間連載は単に売り上げを報告するだけでなく、広告クライアント様や代理店様へのお礼、読者へのお礼の意味も込めて書いているつもりなので、そういう記事は続けたいという思いもあります。

果たして売り上げ報告という読者にとって興味がある部分を欠いたまま、そうした一方的な思いの記事が成立するかどうか分からないので、そのあたりは来年の今頃まで自分への宿題にしたいと思います。もしかしたら気が変わって、売り上げ報告を続けるかもしれませんし……。

[たぶん最終回]というのは、そうしたニュアンスを含んでいると思っていただければと思います。

いずれにせよ、今年もPublickeyをご愛読いただきありがとうございました。来年もぜひよろしくお願いいたします。明日がPublickeyの今年最後の記事になります。年間人気記事ランキングをお届けする予定です。

FAQや仕事のやり方などについて

Publickeyの経費はどれくらいかかっているの? とか、ふだんどんな仕事をしているの? とか、仕事のやり方のノウハウは? などは、以下の記事で紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。

ふだんの仕事についてはこの記事で説明しています。6年前の記事ですが、この頃からあまり進歩していませんね:-)

ライターという仕事についての考え方も紹介しています。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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