資金が尽き12月に廃刊するはずだったLinux Journal、一転して支援者により存続へ、「Linux Journal 2.0」を宣言

2018年1月10日

「みなさん、どうやら終わりのようだ。このまま計画通りであれば、Linux Journal 11月号が最終号になってしまうだろう」

約1カ月前、2017年12月1日付けでLinux JournalのWebサイトにポストされた記事「Linux Journal Ceases Publication」(Linux Journalは出版を停止する)には、Linux分野の有名な専門誌であるLinux Journalが出版活動を停止するという、悲しい告知が記されていました。

Linux Journal Ceases Publication

同社は以前から売り上げが振るわず、資金的にぎりぎりの状態で運営を続けている中で、2017年11月の売り上げ不振が最終的に回復不能な状態を引き起こしてしまったと説明されています。

売り上げが振るわなかった原因は広告ビジネスがうまくいかなかったことだと、前述の「Linux Journal Ceases Publication」で次のように記されています。

While we see a future like publishing’s past—a time when advertisers sponsor a publication because they value its brand and readers—the advertising world we have today would rather chase eyeballs, preferably by planting tracking beacons in readers' browsers and zapping them with ads anywhere those readers show up. But that future isn’t here, and the past is long gone.

私たちはLinux Journalの将来像として、広告スポンサーが出版物のブランドや読者に価値を見いだしていたような以前の姿を見ていました。しかし、いまの広告はむしろ読者の目玉を追いかけ、ブラウザのビーコンを追跡しようとし、読者がどのページを見ようともそこに表れることを追求してきました。私たちが考えていたような未来はなく、過去は遠くなっていきました。

1994年に創刊されたLinux Journalは当初は紙の雑誌として出版されていました。その後、デジタル化の波に押されて2011年8月には紙の出版をやめて電子出版へ移行(ちなみに、このときにすでに「Linux Journal 2.0」という表現が使われています:-)。

以来Linux Journalは電子版として毎月出版されてきました。しかし資金が尽きたことにより2017年12月号の出版を断念。定期購読者に対して残りの号数に応じた返金を行う資金すらなくなってしまったと懺悔しています。

ただし、まだ最後の望みとして、Linux Journalのブランドや過去記事のアーカイブや読者などの資産に興味のあるスポンサーがいたら知らせてほしいと呼びかけていました。

そして、その望みが叶いました。

Linux Journalは死ななかった

2018年1月1日、Linux JournalのWebサイトには「Happy New Year - Welcome to Linux Journal 2.0!」という記事がポストされました。

Happy New Year- Welcome to Linux Journal 2.0!

記事は次のように始まっています。

Talk about a Happy New Year. The reason: it turns out we're not dead. In fact, we're more alive than ever, thanks to a rescue by readers—specifically, by the hackers who run Private Internet Access (PIA) VPN, a London Trust Media company.

新年明けましておめでとうと申し上げましょう。なぜなら、私たちは一転、死ななかったからです。実のところ、私たちは以前より元気でさえあります。とりわけ、読者の皆さま、Private Internete Access(PIA)VPNを運営するハッカーの皆さん、London Trust Media Companyのおかげです。

(略)

In addition, they aren't merely rescuing this ship we were ready to scuttle; they're making it seaworthy again and are committed to making it bigger and better than we were ever in a position to think about during our entirely self-funded past.

さらに、彼らは店じまいする準備をしていた私たちを救っただけでなく、これまで自己資金の運営ではできなかったような、より堅牢で大きく成長するための見直しを可能にしてくれたのです。

Linux Journalはこれから、読者と一緒に新しい方向性を考え、ビジネスモデルを見直し、ベンダマネジメントプロジェクトなどの実験にも参加していくことになるとしています。

PublickeyはLinux Journalとは比べられないくらい小さいメディアではありますが、同じようにITの専門メディアとして、運営の難しさはよく分かるつもりです。Linux Journalに起きたことは人ごとではないなあと思いつつ、この記事を書きました。

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Junichi Niino(jniino)
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