1000万IOPSを誇るDell EMCの新ハイエンドストレージ「PowerMax」、高性能の背後にあるNVMeや機械学習などについて責任者に聞いた
Dell EMCが今月、米ラスベガスで開催された「Dell Technologies World 2018」で発表した「PowerMax」は同社の新たなハイエンドストレージです。
PowerMaxにおける最大のハイライトは1000万IOPSという高性能であり、しかも徹底したNVMeの採用、ストレージOSへの機械学習機能の組み込み、ストレージクラスメモリ(SCM)対応など、ハイエンドストレージにふさわしい最新のストレージ技術が投入されています。
PowerMaxの高性能の背後にあるストレージの技術とその将来について、Dell EMCでVMAXビジネスユニットのゼネラルマネージャー兼シニアバイスプレジデントのボブ・デクレシェンゾ(Bob DeCrescenzo)氏に聞きました。
PowerMaxはハードソフト両面でNVMeに最適化
──── PowarMAXのハイライトの1つが高い性能です。これを実現できた技術的なおもな要素とは何ですか?
デクレシェンゾ氏 PowerMAXは、NVMeのためのアーキテクチャをEnd to Endで備えています。バックエンドもこれに合わせて作り変えています。
これまでストレージに使われてきたSAS(Serial Attached SCSI)やファイバーチャネルは、ハードディスクドライブのために作られたプロトコルでした。一方、NVMeはPCIバスに対応し、マルチパスが可能で並列処理に対応しています。
さらにNVMeのフラッシュドライブそのものも、SASフラッシュドライブよりもスループット、レスポンスタイムが優れており、OSやドライバもこれに合わせて開発したことで、これまでSASで存在していたオーバーヘッドを取り除いているのです。
さらに、(ストレージ内部のNVMe化だけでなく)ホストからストレージへの接続におけるNVMe対応も今後行われる予定です。製品としては準備ができています。
──── EMCは2016年にDSSDという、PCIe接続を全面的に採用した製品を発表しています。当時、この技術は非常にチャレンジングなものでしたが、PowerMAXでのNVMeの採用はこの技術が成熟した、ということになるのでしょうか?
デクレシェンゾ氏 DSSDでは、すべてをプロプライエタリな技術として製品を実現していました。ですから、これを顧客にも使ってもらうようにするのはたしかにチャレンジングでした。
しかし現在、NVMeはチップベンダーから対応チップもリリースされているように、ストレージのためのプロトコルとして業界のスタンダードになっていると考えています。
ストレージOSに機械学習を搭載
──── PowerMAXのもう1つの注目点は、ストレージOSに機械学習機能が備わっていることです。機械学習をどのように使っているのでしょうか?
デクレシェンゾ氏 機械学習機能は、データの粒度やアクセスパターンを基にリアルタイムに分析をしています。これによりストレージ内のデータ配置などを制御することで性能を最適化しています。
機械学習は、圧縮や重複排除といったデータ削減や、新しいQoSサービスとも統合されています。
──── ストレージクラスメモリ(SCM)への対応とはどういうものですか?
デクレシェンゾ氏 SCMで注目しているのはインテルの3D XPointです。通常のメモリのアクセス速度はナノ秒、フラッシュドライブのアクセス速度は100マイクロ秒程度ですが、SCMはこのあいだに位置する素晴らしい性能を備えています。
これをPowerMaxのドライブとして使おうと考えています。一定のワークロードの性能向上が期待できるでしょう。
さらにPowerMaxの機械学習によって、ホットデータをこのSCMに配置することで最大の性能を得られるようになります。
ストレージアプライアンスはどうなる?
──── 最後はストレージの将来像について聞きたいと思います。サーバ本体にもやがて不揮発性メモリが搭載されようとしていくなかで、ストレージアプライアンスはどうなっていくと考えていますか?
デクレシェンゾ氏 興味深い質問ですね。現在ではフラッシュドライブとハードディスクドライブの両方を搭載した製品が存在しています。これと同様に、将来はより高速なSCMとフラッシュドライブとを混在したストレージが登場することでしょう。
しかもフラッシュドライブはQLC(Quad Level Cell)と呼ばれる、より高密度で大容量のものになります。それをSCMと組み合わせ、高性能で大容量なものになっていくのではないでしょうか。
──── ありがとうございました。
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