マイクロソフトとVMwareが一転、「VMware virtualization on Azure」で協力体制に
マイクロソフトが11月に発表したMicrosoft Azure上のVMware環境「VMware virtualization on Azure」の構築に、VMwareと同社のパートナーが協力していることが明らかになりました。
マイクロソフトが「VMware virtualization on Azure」を発表した当初、VMwareの上級副社長であるアジャイ・パテル氏はブログにて「このサービスはVMwareとは関係なく開発されたものであり、VMwareによる認証もサポートもされていない。」と、マイクロソフトを牽制するコメントを発表していました。
マイクロソフトとVMwareおよびVMwareクラウドパートナーが協力
しかし、この状況から一転。Microsoft Azureブログに12月19日付けでポストされた記事「VMware virtualization on Azure」で、マイクロソフトはVMwareと協力して「VMware virtualization on Azure」を構築することが紹介されています。
We are facilitating discussions with VMware and the VCPP partners to ensure you have a great solution and a great support experience when we make this offering generally available next year.
私たちはVMwareおよびVCPP(VMware Cloud Partner Program)パートナーらとの議論を通じて、来年に正式サービスを予定しているこの素晴らしいソリューションとサポート体制を確実なものにしようとしています。
同じくVMwareもマイクロソフトとの協力が始まったことをブログで表明しましたが、こちらは新しい記事ではなく、「このサービスはVMwareとは関係なく開発されたものであり、VMwareによる認証もサポートもされていない。」と表明したそのときのブログの内容の一部を書き換えることで対応しています。
書き換えた後の、その部分を引用しましょう。
This offering is being developed independent of VMware, however it is being offered as a dedicated, server-hosted solution similar in approach to other VMware Cloud Provider Partners (VCPP). The deployment is on VMware certified hardware consisting of FlexPod. VMware is in the process of engaging with the partner to ensure compliance and that the appropriate support model is in place.
このサービスはVMwareとは関係なく開発されたものである。しかし、これは専用のサーバホステッドソリューションであり、ほかのVMwareクラウドプロバイダパートナー(VCC)のアプローチと同様のものである。デプロイされたのはFlexPodで構成されたVMware認証ハードウェアだ。 VMwareはパートナーとともに連携し、適合性と適切なサポートモデルが整備されるよう取り組んでいる。
ここで明らかになったのは、大きく次の2点です。
まず、VMwareと同社のクラウドパートナーが、VMware virtualization on Azureとそのサポート体制の構築のためにマイクロソフトに協力を開始している、ということ。
そしてVMware virtualization on AzureはFlexPodで構成されている、ということです。
FlexPodとはシスコのサーバとNetAppのストレージによる統合システム
FlexPodとは、シスコのUCSサーバとNexusスイッチ、NetAppストレージから構成される統合システムです。統合システムとして動作保証済みであり、VMware環境としても保証されています。
マイクロソフトは、実はこのFlexPodがMicrosoft Azureで提供しているSAP HANA向けのラージインスタンスと同様のものであることを明かしています。
our preview hardware will use a flexpod bare metal configuration with NetApp storage. This hosted solution is similar to Azure's bare metal SAP HANA Large Instances solution that we launched last year.
(VMware virtualization on Azureの)プレビューハードウェアでは、FlexPodベアメタルとNetAppストレージの構成を利用する予定だ。このソリューションは昨年開始したAzureのSAP HANAラージインスタンスソリューションのベアメタル構成と同様のものである。
FlexPodはオンプレミスでも多く採用されている統合システムです。VMware virtualization on AzureのハードウェアとしてFlexPodが用いられ、ソフトウェア面でもVMwareとの協力体制が得られるとなれば、オンプレミスのVMware環境をそのままクラウド上へ移行できる安定したソリューションになることが期待できるでしょう。
VMwareとマイクロソフトはブログから何を消したのか?
今回の発表において、マイクロソフトとVMwareは両者とも過去のブログを書き換えています。
実は、過去のブログをどのように両社が書き換えたのかを見ていくと、協力関係を結んだ背景が見えてきます。
VMwareは、もともとブログで次のように書いていました。前述の引用部分と読み比べてみてください。
This offering has been developed independent of VMware and is neither certified nor suppoted by VMware. Microsoft's stated intention is to enable this as an intermediary migration solution and not as a solution architected for running enterprise workloads in production.
このサービスはVMwareとは関係なく開発されたものであり、VMwareによる認証もサポートもされていない。マイクロソフトはこれを中間的なマイクグレーションのためのソリューションと位置づけており、本番環境でエンタープライズワークロードを実行するためのソリューションとしては構成されていないのだ。
現在は上記の後半にある、VMware virtualization on Azureは本番環境向けではなくマイグレーションのためのソリューションだ、と指摘していた部分は消えています。
マイクロソフトも同様に、VMware virtualization on Azureを初めて紹介した11月21日付けの記事「Transforming your VMware environment with Microsoft Azure」を書き換え、以下のようにVMware virtualization on Azureに関する内容をすべてばっさりと削除しています。
Updated 12/19: Prior information on VMware virtualization on Azure has been removed from the below and moved to this new post.
12月19日更新:以前のVMware virtualization on Azureに関する情報は削除され、新しい投稿に移行しました。
では初出時にVMware virtualization on Azureはどう紹介されていたかというと、VMwareからAzureへ移行するためのサービスとして紹介されていました。例えば、次のような記述があったのです。
there may be specific VMware workloads that are initially more challenging to migrate to the cloud. For these workloads, you may need the option to run the VMware stack on Azure as an intermediate step.
特定のVMwareワークロードのなかには、最初からクラウドへ移行するのが難しいものもあります。そうしたワークロードに対しては、Azureの上でVMware環境を中間的なステップとして実行するような選択肢が必要でしょう。
両社ともに「VMware virtualization on AzureはVMwareからAzureへ移行するためのサービスである」という説明を過去のブログから消しているのです。
VMware virtualization on Azureの位置づけが当初と変わった
ここからの推理は簡単です。
まず、マイクロソフトはVMware virtualization on Azureが、VMwareからAzureへの移行サービスであるという当初の位置付けを撤回し、Azure上でVMwareの本番環境を実現するサービスであると位置づけ直したのでしょう。
であればこそ、VMwareはMicrosoft Azureもほかのクラウドパートナーと同様にクラウド上でVMware環境を提供するパートナーとして、互換性の検証作業などに協力することにした、というわけです。
クラウド上でVMware環境を提供するサービスを実現したとしても、VMwareの支援なしにはエンタープライズ市場において顧客が安心して利用できるようなものにならない。おそらくマイクロソフトはそう判断し、VMwareと手を握ることを選択したのだと思われます。
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