VMware、vCloud Air事業の売却を発表。自社でデータセンターを展開する戦略から撤退、クラウドを仮想化するサービス事業者へ
VMwareは、同社のクラウドサービスであるvCloud Air事業を、フランスに本社を置くクラウドベンダのOVHへ売却すると発表しました。
これによりVMwareが保有していたvClud Airのデータセンター、顧客、運用チームなどはOVHへ移管されることになります。OVHは今後、vCloud Airと同様のサービスを「vCloud Air Powered by OVH」として提供していく予定です。売却は2017年6月までに行われる見通し。
vCloud Airは、VMware自身が提供するIaaS型のパブリッククラウドサービス。VMwareのテクノロジーを採用しているため、オンプレミスで利用されているvSphereなどVMware製品で構築した仮想化基盤やプライベートクラウドとシームレスなハイブリッドクラウドが構築できる点が特長でした。
同社はvCloud AirでAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなど既存のパブリッククラウドベンダと競合する構えでしたが、それが成功したとは言いがたく、1年前の2016年4月にはvCloud Airの日本ロケーションを2017年3月で終了させることを発表するなど、徐々にvCloud Airが縮小方向にあることは誰の目にも明らかでした。
vCloud Air事業の売却によって、VMwareは自社でデータセンターを展開してAWSやマイクロソフト、Googleなどと正面から戦うという戦略から撤退したことになります(このことは2016年10月の記事で予測したとおりでした)。
そして今後のVMwareのクラウド戦略は次の2つのサービスが軸になることでしょう。1つは「VMware on AWS」、そしてもう1つは「Cross-Cloud Services」です。
VMwareのクラウド戦略の軸となる2つのサービス
VMware on AWSは、AWSのクラウドインフラの上でvSphereを中心としたVMwareテクノロジーによって構築されたパブリッククラウドのサービスです。発表によるとAWSはインフラを提供し、VMwareがこのクラウドサービスの構築、提供、販売を行うとされています。
もちろんオンプレミスのVMware製品群とシームレスなハイブリッドクラウドが構築可能。
こうしてみると、まるでこれから登場するVMware on AWSへ主役を明け渡すためにvCloud Airの事業売却が行われたのではないかとも思えるような展開とも言えます。
一方の「Cross-Cloud Services」は、仮想化ハイパーバイザによってサーバを抽象化したように、パブリッククラウドの上にも仮想化レイヤを設けることで抽象化し、クラウドの違いを超えてリソースを一元管理できるようにする、というものです。
Cross-Cloud ServicesはVMwareがクラウドサービスとして提供します(どのクラウド基盤を利用するのかは明らかにされていませんが、AWSを利用するのかもしれません)。
VMware on AWSもCross-Cloud Servicesも、どちらもVMwareが主体となって提供するサービスです。オンプレミスではvSphereなどのパッケージソフトウェアを展開してきた同社も、クラウド市場においてはサービス事業者として戦うことになるわけです。
パッケージソフトウェアからサービスへの転換は、マイクロソフトやアドビが挑戦し、成功しつつあるという評価を固めようとしています。果たして、パット・ゲルシンガー氏率いるVMwareはこの転換に成功できるでしょうか。
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