Twilioがサーバレスコンピューティング「Twilio Functions」公開。APIだけでなくアプリケーション実行環境も提供へ
「Twilio(トゥイリオ)」という企業の名前は、多くのデベロッパーにとって「API経由で電話をかけたりSMSを発信できる機能を提供するAPIプロバイダ」として知られています。例えば、アプリケーションやインフラになんらかの障害が発生すると自動的に担当者の携帯電話に電話を掛ける、といった監視ツールの実現には、TwilioのAPIを利用することが定番となっています。
そのTwilioは、5月24日と25日にサンフランシスコで開催された同社の年次イベント「SIGNAL 2017」で、サーバレスコンピューティング対応のアプリケーション実行環境を提供する「Twilio Functions」を発表しました。
サーバレスコンピューティングの代表的な存在はAWSの「AWS Lambda」で、2014年に発表されて大きな話題となりました。その後2016年にはGoogleが「Google Cloud Functions」、マイクロソフトが「Azure Functions」を、IBMが「OpenWhisk」を相次いで発表し、サーバレスコンピューティングはクラウドにおける大きなトレンドになっています。
サーバレスコンピューティングの特長は、コードがイベントドリブンで実行される点にあります。例えばHTTPリクエストが発生したときなどのイベントが発生すると、あらかじめ関数としてデベロッパーが登録しておいたコードが呼び出されて実行されるのです。
と同時にサーバレスコンピューティングはマネージドサービスとして提供されるため、利用者はサーバのスケーラビリティや運用管理などを気にする必要もありません。
なぜTwilioがサーバレスコンピューティング環境を提供するのか?
Twilio Functionsも、こうしたサーバレスコンピューティングの特長を備えています。実行環境としてはNode.jsを利用しておりJavaScriptでプログラミング可能。当然ながら、Twilioが提供するさまざまな電話や音声などのAPIを利用可能です。
これまでデベロッパーがTwilioのサービスを利用するには、オンプレミスやクラウドなどのアプリケーション実行環境を自分で用意する必要があり、そこからインターネット経由でTwilioのAPIを呼び出す必要がありました。
また呼び出し時にはセキュリティを確保するためのクレデンシャルの利用など複雑な手順が必要なため、トラブルが発生した場合には原因がインターネットに関するものかセキュリティなどコード周りなのかなどの切り分けに手間がかかるものでした。
Twilioが自社でサーバレスコンピューティングに対応したアプリケーション実行環境の提供を開始する背景には、Twilioを利用するアプリケーションにつきまとっていたこうした複雑性を排除し、よりシンプルで安定的なTwilioアプリケーションの実行環境をデベロッパーに提供する意図があります。
しかもTwilioは、音声認識や自動応答などを組み合わせたコールセンター向けのアプリケーションや、音声と動画を組み合わせた電子会議を実現するようなアプリケーションなど、より大規模かつ高度なコミュニケーションのためのアプリケーションを実現する基盤を提供する企業になろうとしています。
Twilioがこうしたより高度で幅広いコミュニケーションの基盤技術を提供する会社になるうえでも、Twilio Functionsのようなアプリケーション実行環境を提供することは欠かせないことだったのではないでしょうか。
月間1万回の呼び出しまで無料で利用可能
Twilio Functionsは現在ベータ公開の段階でだれでも利用可能。月間1万回までの呼び出しは無料で、それ以後1回あたり0.0001ドルとなりますので、開発用のテストであれば無料の範囲で十分収まるのではないでしょうか。
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