SAP、「SAP Cloud Platform」にクラウドの名称変更。iOS用SDK、IoT対応、仮想マシン、API群など汎用PaaS型クラウドサービスとして訴求へ
SAPは、これまで「SAP HANA Cloud Platform」としてきた同社のPaaS型クラウドサービスの名前を「SAP Cloud Platform」へ変更すると発表しました。
同社はこれまでインメモリデータベース「HANA」のブランド名を、クラウドサービスや新版ERPの「S/4 HANA」などに先進的な技術を示すキーワードとして組入れてきました。
今回、そのHANAをクラウドサービス名から取り去り、「SAP Cloud Platform」へ変更する背景には、IoTやモバイル対応などを幅広くカバーするクラウド展開を訴求することで、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するという戦略を示す狙いがあると考えられます。
同社のクラウドサービスはこれまで基幹業務向けの色が濃いものでしたが、今回のブランド変更でより汎用的なPaaS型クラウドサービスへと位置づけを変更。IBMのBluemixやマイクロソフトのMicrosoft Azureなど既存のPaaSとの競合を以前より意識させるものとなっています。
と同時に、SAP Cloud Platformはその内部も汎用的なPaaS型クラウドサービスへと向かっていました。下図は昨年の同社の年次イベント「SAPPHIRE NOW」で示されたSAP Cloud Platformの内部アーキテクチャですが、ここに示されているようにOpenStackとCloud Foundryで構築されています。
OpenStack+Cloud Foundryという構成は、IBM Bluemixと同じです。SAPにとってSAP Cloud PlatformはBluemixのような汎用PaaSの能力を備えつつ、インメモリDBのHANA、そしてアプリケーション層で展開される多数のビジネスサービス、S4HANA、SuccessFactors、Aribaなど同社のサービスとの統合などを差別化要因として持つものと位置づけているはずです。
もともと旧SAP HANA Cloud Platformは、SAPがクラウド市場へ本格参入するのに合わせて2013年に発表されたPaaS型クラウドサービスでした。インメモリデータベースのSAP HANAを核とした高速処理や高度なセキュリティなどを特長とし、同社がクラウドサービスとして提供するさまざまな業務アプリケーションの統合的な基盤になるとともに、顧客もこの基盤のうえでミッションクリティカルな業務アプリケーションの開発と運用が可能。
2014年には日本にも東京と大阪の2箇所にクラウドのデータセンターを開設。基幹業務向けクラウドサービスの「SAP HANA Enterprise Cloud」などを提供しています。
今回の名称変更とあわせて、SAP Cloud Platformに対応したiOS用のSDKが3月30日にリリース予定。また欧州リージョンなどで利用可能な仮想マシンサービスは第1四半期中に米国リージョンでも利用可能に。API群の拡充も予定されています。また、IoTデバイスからのデータを受け取るIoTサービスや、ビッグデータ処理のためのHadoopベースのサービスなどもすでに提供が開始されています。
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