倒産したRethinkDB、知的財産を買い取ってもらいLinux FoundationがApacheライセンスで公開。今後もコミュニティによる開発は続く
JSON形式のデータなどを処理可能な分散データベース「RethinkDB」を開発、販売していた同名の企業であるRethinkDBは、ビジネス的には成功できず、昨年10月に倒産しました。今年の1月には、同社のビジネスの失敗を自己分析した記事「RethinkDB: why we failed」(日本語訳)が公開されたことも一部で話題になりました。
そのRethinkDBの知的財産(コード、ドキュメント、図版、トレードマーク、ドメイン名など)を、Kubernetesなどの開発を主導するCloud Native Computing Foundationが買い取り、Apache Licenseにライセンスし直したうえでThe Linux FoundationへCloud Native Computing Foundationへ寄贈されたことが発表されました。
Apacheライセンスになったことで改変や配布などの制約がゆるくなったため、より活発な利用が期待されます。
Joyentのスタッフがライセンスし直しを支援
RethinkDBは2009年の登場当初、SSDに最適化されたデータベースとしてクローズドソースで開発されていましたが、その後方向転換し、JSONデータなどを扱える分散データベースとなり、オープンソース化もされました。このときのライセンスはAGPLでした。
昨年の10月に企業としてのRethinkDBが倒産後、多くのエンジニアがオンライン決済などのサービス提供企業「Stripe」へ移ったとのことですが、オープンソースとしてのRethinkDBのコミュニティは引き続き維持され、開発は続けられていました。
その後、RethinkDBの知的財産をCloud Native Computing Foundationが買い取ることになった経緯については、Joyentのブログ「Joyent | The liberation of RethinkDB」に当事者であるBryan Cantrill氏が書いています。
Bryan Cantrill氏はRethinkDBのこれまでの経緯がJoyentが経験したことと似ていることでRethinkDBに親近感を感じており、それが今回の背景にあったと説明。ただしRethinkDBの発展の面でAGPLライセンスが気がかりだったと。
そこでCantrill氏は自身がCloud Native Computing Foundationにおいて技術面でもっとも重要な決定権を持つのテクニカルオーバーサイトコミッティの一員であることを活かして、RethinkDBの知的財産を買い取り、ライセンスし直すことをCloud Native Computing Foundationに提案。これはRethinkDBのコミュニティのためだけでなく、広くコミュニティ全体にとってよいことだとCantrill氏はブログに書いています。
そしてこの提案はCloud Native Computing FoundationのエグゼクティブディレクターDan Kohn氏の賛同を得て、実現に向かったとのこと。
RethinkDBの次のバージョンでは、コントリビュータがもっと貢献しやすいようにコードを改善することが優先事項の1つだと説明されています。
RethinkDBのこの出来事は、会社がなくなったとしてもコミュニティの連係によってソフトウェアは生き延びて進化できるという、オープンソースの優れた面をあらためて示したものになるのではないでしょうか。
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