アジャイル未経験チームにとって、スクラムコーチの存在はどのくらい有効だったのか? [PR]
「うちのエンジニアは18時10分には職場に誰も残っていません。チームが立ち上がって2カ月ですが、ほぼ残業はゼロ。モチベーションも高く、昼休みもプライベートな時間もしっかり確保しています」
デンソー デジタルイノベーション室長の成迫剛志氏は、同社内で新しく活動を開始した自動車の走行に関するデータベースを開発しているチームをこのように評します。同チームはアジャイル開発手法のひとつであるスクラムを採用し、開発を進めています。
デンソーは自動車部品メーカーとして世界的に知られている企業。そして同社を含む自動車産業はいま、自動運転やIoTといった大きな技術変革のまっただ中にあります。
新しい開発チームとは、こうした自動車産業の将来を見据えたものです。
競合とは思えなかった企業が競合になる
成迫氏はこの開発チームの責任者であり、その目標について次のように説明します。
「われわれの将来を見据えたとき、シリコンバレーの企業たちが自動運転に取り組んでいるように、これまで競合とは思えなかった企業との競合が始まろうとしていて、デンソーとして単なるモノづくりからコトづくりへ変革しなければいけません。
コトづくりのひとつとして考えられるのは、ヒトやクルマなどの移動を支えるようなサービスをクラウドで提供することです。
そう考えると、いままでのモノづくり、特に自動車業界は、安心安全のために時間をかけて品質の高いものをつくるという文化がありました。しかし、競合してくるIT業界の企業は、われわれとは全く異なるすごいスピードで開発を進めてきます。
彼らと同じように、われわれにもサービスを短期間で作る力が必要です。それはアジャイル開発もそうだし、デザイン思考のアプローチが大事で、シリコンバレー流で企画構想も含めて一貫してできるチームが必要と考えています」(成迫氏)
同社はこうしたチームを9月にもうひとつ立ち上げ、その後もさらに立ち上げていくとしています。
モノづくりの企業文化にどうやってスクラムを導入しようか
デンソーの新しい開発チームが、前述のように定時できっちり仕事がこなせているのは、アジャイル開発手法のひとつとして知られるスクラムの採用が成功しているためだと成迫氏。
しかし、実は成迫氏はアジャイル開発の経験がなかったと振り返ります。
「デンソーに入社して驚いたのは、日本のモノづくりを支えるメーカーはこんなにきっちりと品質を作り込んでいたのか、ということです。詳細に要件定義を詰め、多くの関係者で時間をかけて合意形成をしています。
そうした企業に対し、IT業界的な考え方、シリコンバレー流のやり方をどうやって導入しようかと、アタマを抱えていました」(成迫氏)
成迫氏がアジャイル開発手法の情報収集をするなかで耳にしたのが、KDDIがスクラムを社内で実践しているという事例でした。
「KDDIは通信事業という堅い業界にあって、デンソーと同じく品質をすごく大事にしているはずの会社です。そのKDDIがどうやってスクラムを導入したのか、聞きに行こうと思いました」(成迫氏)
同じ品質重視の企業に事例を聞きに行った
KDDIは、同社のクラウドサービス開発部門が内製化の推進とともにスクラムを導入。外注による開発中心に構築されていた社内の仕組みを少しずつ変えていくことで、社内へスクラムの浸透を実現してきたと同社ソリューション事業企画本部 事業企画部 和田圭介氏。
成迫氏はこう続けます。
「KDDIに話を聞きに行ったら、自分たちが苦労してスクラムを導入したノウハウを、コンサルとして提供されるとのことでした。それならお願いしますと」
こうしてデンソーはKDDIが提供するスクラムのコーチングを受けて、新しい開発チームを立ち上げたわけです。
KDDIは、2017年1月にスクラムの生みの親の一人であるジェフ・サザーランド氏がCEOを務めるScrum inc.、永和システムマネジメントとの協業を発表。2月からアジャイル開発教育プログラムを提供することも発表しています。
デンソーがKDDIから受けているスクラムのコーチングは、このプログラムの延長線上にあるものです。
スクラムの採用にコーチングは不可欠だった
デンソーの新開発チームはどんなコーチングを受けたのでしょうか?
成迫氏は、「私もコーチングというものを最初は理解していなかったのですが、まさにスポーツのコーチのようでした。まずは基礎を教えてもらい、チームが自分たちで開発を始めると、あれこれ細かいところに口を挟むのではなく、チームの自律的な動きに寄り添ってくれながら、大きく間違えそうなところでは的確に指示をしてくれます」と語ります。
チームが立ち上がって2カ月で順調にスクラムの導入が進んだ背景には、良いコーチは不可欠だったと。
「研修を受けたり本を読んだりして自分たちで始めたとしても、良いコーチについてもらわないとうまく立ち上がらなかったのではないかと思います」(成迫氏)
なぜスクラムで効率性が上がるのかについては、次のように述べています。
「僕が考える、スクラムで効率が上がる要因とは、開発に関係ない業務を開発者にさせないことが徹底されているところです。必要のない余計なドキュメントも書かないし、パワポもワードもエクセルも使いません。必要なコミュニケーションはすべてホワイトボードと付箋でやっています。ホワイトボードに全部書いてあるから、情報共有ツールも今のところは必要ありません。
そして短期間でやることを練って決めているので、開発者の待ち時間もなく、つねにやることが明確になっていて、それを着実に実行していきます。
たとえばスクラムだと直近でやらなくてはいけないこと、このスプリントでやるべきことに集中すべきですが、将来的には必要だからこれも検討しておこう、と考えるメンバーがいました。
その辺りの価値観、マインドセットをスクラムに合わせていくことを、メンバーに染みこませるのに苦労しました。けれど、そういう問題が起きたときにはコーチが適切に支援してくれました」(成迫氏)
KDDIの和田氏もこの話を補足します。
「われわれの協業先のScrum Inc.でもまったく同じことを言っていて、スクラム自体、土台は数枚の紙に書かれた説明で、そんなにルールも書いていないんです。でも、生産性を上げようとすると、バックログがどれだけきっちり書かれているか、プロダクトオーナーがスプリントの計画にどれだけしっかりのぞめるか、あるいはチームでは役割が担当ごとに分かれがちなのを、どうやって多能工化していくかとか、そういうことが大事になります。
スクラムマスターがそうした意識付けの支援をできればいいですが、最初はそこまでできないので、コーチについてもらって進めていく。チームがうまくいったら、将来的にはチームの中から次のコーチがでてきて広がっていけると思います」
そうしたチームの環境として大事なのはなにか。成迫氏は、ホワイトボードや付箋(ふせん)などだと説明します。
「一番大事なのは、チーム全員がまとまっていられる十分な広さの開発ルーム。ここは外部からの雑音が入らない環境である必要があります。なので、都内ではなく新横浜に開発ルームを作りました。そしてホワイトボードと付箋とペン、高スペックのパソコン。開発者が働きやすい環境を用意することが重要です」
第二、第三のチームをこれから作り上げていく
こうして新しくデンソー社内に編成され、立ち上げに成功した開発チームにとって、まずは効果の認知度を上げることが重要だと成迫氏は語ります。
「成果を出すことができて、今後のビジネスに有効だと会社のいろんな部署に認知していただく。今後は、そのような社内認知の獲得を目指して活動していきます」
いまのところそれは順調に進んでいるようです。そしてデンソーでは第二、第三の開発チームに参加してくれるメンバーを継続的に募集中です。
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(本記事はKDDI株式会社の提供によるタイアップ記事です)
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