IBMとソニー、磁気テープのカートリッジひとつで330テラバイトに相当する記録密度の技術を実現。今後10年間にわたって磁気テープが進化する可能性を示すと
「少なくとも今後10年にわたって、カートリッジあたりの容量を2年ごとに倍増させる可能性が示せた」(IBM Research Mark Lantz博士)。
IBMは、ソニーストレージメディアソリューションズ株式会社が開発したスパッタリング磁気テープの試作品を用いて、磁気テープの記録密度の新記録となる1インチあたり201ギガビットを達成したことを発表しました(IBMの発表、ソニーの発表)。
この記録密度は、磁気テープのカートリッジひとつで330テラバイトの情報が非圧縮の状態で保存できることに相当します(つまり3倍ちょっと圧縮すれば、カートリッジひとつ分の論理容量が1ペタバイトになるということです)。
記事の冒頭にあるように、IBMの研究チームはこの新技術によって今後10年にわたって磁気テープの容量拡大の可能性が示せたとしています。
今回用いられたおもな新技術として、ソニーはテープ表面と磁気ヘッドの間に塗布する潤滑剤を新たに開発。この潤滑剤は、テープ表面と磁気ヘッドの走行摩擦を抑える低摩擦特性と高耐久性という二つの特性を実現。
また、磁性膜の結晶配向の乱れや大きさのばらつきが生じないように、不純物ガスの発生を抑える新たなプロセス技術を開発。1000メートルを超えるテープ長が必要なテープストレージカートリッジ製造の基礎となるプロセス技術を確立したとしています。
一方のIBMは、ノイズ予測検出原理に基づいた信号処理アルゴリズムや、7nm以上の精度でヘッドの位置決めができるサーボ制御技術、新しい低摩擦テープヘッドテクノロジーなどを用いたと説明しています。
磁気テープは過去60年にわたって使い続けられてきたストレージの一種で、大容量のデータを低コストで長期保存することに向いています。例えば、海底油田の調査のために何週間も海上で活動し続ける探査船では、センサーから出力される膨大な海底のデータの記録と過去何十年分ものデータの保管のために磁気テープが用いられるなどの事例があります。
今後データの重要性がより高まり、クラウドなどの分野でさらに大量のデータが保存されるようになることは確実です。そうしたデータのアーカイブに適した磁気テープは、今後も使われていくことになると見られます。
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